スタートアップバイオベンチャー経営(栄一の独り言)【第8回】

今回は、「核酸医薬の事業化を目指すスタートアップベンチャー企業」へ向けて「核酸医薬のCDMOリーディングカンパニーをベンチマークする」と題してお話をします。

核酸医薬品のCDMO分野は、日系の化学メーカーの進出が近年加速しています。その中でもNitto(日東電工)グループの米国Nitto Denko Avecia Inc.は、核酸医薬原薬受託製造分野で世界シェアトップを誇り、アンチセンス、siRNA、アプタマー、免疫賦活剤、miRNAおよびデコイ核酸といった1200 配列以上の核酸製造経験をもとに最適な製造条件を確立する能力を保有しています。
日本/米国での少量製造(25mgから30gのNon-GMP 製造)から、米国での中~大量製造(~数kg/バッチのNon-GMP/GMP 製造)によるシームレスなスケールアップおよび、FDA査察対応経験、承認薬の製造経験をもとにグローバルな臨床試験や商業生産の製造体制を整えサービスを提供しています。

それでは、日東電工の核酸医薬CDMOビジネスを深掘りして参りましょう。
まず、今から20年以上前の1999年から核酸製造の受託ビジネスを開始されておられる点です。
既に、1,200配列以上の製造実績があり、研究用の少量の受託製造から商業用の大量の受託製造まで対応が可能です。現在の受託実績世界シェアは、60%です。この長年における受託実績に基づく、”ノウハウの蓄積”が世界シェアトップを維持する秘訣ではないでしょうか。

日東電工が核酸医薬事業に参入した1999年当時の核酸医薬品市場は、希少疾患のみで約1億ドルの市場規模でしたが、現在は、新型コロナワクチンの免疫賦活剤としての利用や脂質異常症への適応へ広がり、更に2030年には「がん」への適応拡大が期待されて約300億ドル、1999年当時の300倍(現在の為替レートで、約4兆円規模)まで広がるという予測もあります。
日東電工の経営陣の「先見の明」には、「スタンディングオベーション」を送りたいと思います。
更に、核酸製造受託だけに留まらず、「核酸合成材料」、ポリマービーズの開発も2000年には開始されており、現在その世界シェアは65%を占めています。

日東電工の核酸医薬参入の原点は、Nittoポリマー技術を活かした核酸合成材料、Nitto Phase を2005年に上市したことに始まります。この多孔質構造を有するNitto Phase を使用して核酸合成を行うことにより、高収量の核酸合成が実現できます。
日東電工の核酸医薬事業もう一つの成功の秘訣は、1,200を超える核酸合成実績ライブラリー、ノウハウの蓄積があり、製薬企業、並びに製薬企業へ受託サービスを行っている製造受託会社に対して、素早く、正確に製造プロセスを開発できる体制を整えていることです。
新薬開発の初期段階では、製造工程が確定していないことが多く、新薬メーカーとCDMO間で緊密なコミュニケーションが必要となります。日東電工は、そのノウハウを持ち合わせて、生産移行スピードを競う臨床開発で貢献できるのが強みではないでしょうか。
 


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