Inspection of Injectable Products for Visible Particulates Guidance for Industry FDA:注射剤における視認可能な微粒子(不溶性異物)の検査 産業界向けガイダンスの和訳 【第1回】

 注射剤の可視可能な異物を日本薬局方(JP)では”不溶性異物“と呼び不溶性異物試験が日本薬局方の一般試験法に収載されています。一方、目に見えない小さな微粒子は不溶性微粒子試験として収載されています。二つの試験はUSP、EP、JPでハーモナイズされ同じ方法になっています。溶液の注射剤の異物は、「白黒バックでおのおの5秒見て”容易“に認める異物があってはならないとなっています。用時溶解する注射剤は”たやすく“が”あきらか“になっています。英語では”たやすく“が”readily“、”あきらかに“が”clearly“になっている。この違いを各社が判断して大きさを定めます。
 不溶性微粒子は顕微鏡法(注射剤をメンブランフィルターに捕集して計測)/HIAC(光しゃへい微粒子自動計測装置)で試験を行うので客観的なデータが得られ、3局(USP/EP/JP)間に違いはない。ところが目で確認する不溶性異物には下記の要素があります。
1)    人が目視で確認(個人差、欧米に比べ日本ははるかに厳しい=小さな異物も見る)
一般的に日本人は50μm≦の異物から問題にしますが、欧米では100μm≦からで200μm≦が対策の異物のように感じています。
2)    統計的な問題(不溶性異物は入るのは確率の問題であり、多くの検体が必要)
3)    “たやすく”検出の大きさが不明確(各社で判断)
 そのため、欧米の注射剤が輸入される場合、この不溶性異物が大きなハードルになっています。海外のQAの方から「日本人はクレージーだ(小さな異物を問題にする)」とよく言われました、それに対し「私もそう思います。でも医療現場で小さな異物を見つけ苦情となり、場合によっては製品回収になります」と伝えていました。そして「貴製造所の注射剤は日本市場が求めているレベルを達成していません」と伝え、先ずは現状認識をしてもらうようにと努めました。かつ「私たちは異物削減のノウハウを持っています。それを無料で伝授します。異物改善ができると、今後他の日本の会社から注射剤の委託も受けることができます」とメリットを強調して協力を仰いでいました。
 注射剤の異物セミナーなどでよく「異物改善を海外の相手先にお願いしてもぜんぜん良くならない」と困っておられます。それに対して「当たり前です。欧米では日本で問題になっているレベルの問題は注射剤の異物で起きていない、つまり苦情が来ていない、よって改善の必要がない、そのため注射剤の異物を減らす経験を持っていません。技術がないところに、高い技術を求めてもできないのは当然です」と回答しています。
 相手先の製造部長、QA長、QC長を説得して一緒に異物低減活動をやって行こうと思ってもらうことです。そのためには担当者に任せるのではなく、部長クラスの人が現地を訪れ説明し協力が得られるかが重要になります。前の会社ではほぼ全ての海外製造所の異物低減のために現地に行き、理解と協力を得ることに努めました。その結果、注射剤の異物では製品回収などの大きな品質問題を起こさずに済みました。品質問題を起こすと上から叱られ、問題を起こさないと褒められることもないのがQAの辛いところですが。
 FDAからこのようなガイドラインが出たことは、米国でも不溶性異物対策が重要との認識が高まっているのだと思います。
 このガイドラインにもありますが、注射剤の不溶性異物はQCの試験では保証できません。製造でどれだけ異物を減らす改善を行うかです。かつ工程での全数異物検査のレベルを高めることに尽きます。全数異物検査は100%検査ではないため、どうしても残存異物があります。よって、通常より高い異物不良だと残存異物も多くなりますから、一定の不良率を越えたら再全数検査を行う、あるいは逸脱報告書を出して対応することが、医療現場での不溶性異物の苦情しいては製品回収のリスクを下げることになります。
 

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