再生医療等製品の品質保証についての雑感【第33回】

QbDを意識した工程設計の考え方 (5) ~ 下流工程その1

はじめに
 前回までにお話をした、細胞製造の上流工程設計は、製薬開発と同様のQbD設計を行うのは非常に難しいと考えます。その理由は、時間とともに生じる細胞の変化(増幅・分化)に依存するアウトプットが治療の有効性(QTPP)と相関があることを説明するのが難しいからです。一方で、時間変化を伴わない遺伝子導入などはQbDによる申請が比較的容易に可能となり、実績もあると認識します。
 下流工程は、前述の後者に相当しますので、原則としてQbD設計が可能であると考えます。


● 下流工程設計で必要な品質確保要件
 下流工程の工程設計をQbDにより実施するには、前提として、上流工程の遺伝子導入と同様に、実施(プロセス)のアウトプットが、CQA(重要品質特性)として定量的に評価できることが必要と考えます。我々は、以前(第11回)にお話しした通り、保管や輸送を含めた最終製品のCQAを「活性を有する(増殖可能な)細胞の数」に限定できると考えます。すなわち、細胞の氷晶形成などにおける物理的な破壊による死、あるいはアポトーシスによる自然死など、細胞の生死に関わるもののみとみなしています。ここでもし、製品品質に他の影響が生じる想定がされるならば、対応する評価基準が追加で必要となりますが、このとき、細胞だからと「未知のリスク」を定義すると何も進まなくなります。品質リスクマネジメントを適切に実施することが重要となります。
 細胞製造の下流工程では、分離・精製、充てん、凍結の作業で構成されると認識しますが、製品が生きた細胞であるため、凍結プロセスに入るまでの作業は一定の時間範囲内で実施される必要があります。そのため、分離・精製に相当するプロセスはできる限り含まれないことが望ましいと考えています。細胞製造の分離・精製は、最終製品のポテンシャルを評価することは困難なため、主な目的は、目的外細胞種の除去であると認識します。その場合、目的外細胞種は上流工程において選択的に除去することが可能な場合が多く、セルソーターによる細胞選別にはできる限り時間を割きたくはないと考え、どうしても採用が必要な場合には、より高スループットな手段が望ましいです。
 充てん作業は、全ての細胞製品において必ず必要となります。無菌操作法を採用する全ての製造では、充てん作業による無菌性の確保が製品の安全性に対する最大の留意点です。偶発的に混入した微生物を含む異物は、引き抜き試験での検出は困難で、バリデーションによる評価が必須となります。細胞製造では、これらの無菌性確保の手順構築に加え、上記の活性を有する細胞数(CQA)が安定して達成できる工程パラメータのデザインスペース設計が必要となります。
 凍結作業は、製品を安定的に保存するためには不可欠で、特にロットを形成する製品では手順構築が必須となると認識します。凍結プロセスは、ほとんどの作業が人の手操作が加わらない機器で実施されますが、機器内においては、CQAに対する工程パラメータの制御が非常に難しいと認識します。

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