医薬品開発における非臨床試験から一言【第25回】

In vivoスクリーニング動態

In vivoスクリーニング動態とは、創薬過程において、実験動物を用いた候補化合物のスクリーニング試験となります。実験領域は非臨床試験の全ての領域(有効性、安全性、薬物動態)となり、候補化合物を効率的に絞りこむ研究を行っています。前回に紹介しましたin vitroスクリーニング動態に対して、動物を使用するために、実験のフットワークがやや悪く、またヒトと動物の種差もあり、しっかりとした根拠を持って試験に臨むことが大切です。

「動態」については、薬物の体内動態を明らかにするPK(Pharmacokinetics)と、毒性試験において薬物の曝露量と毒性作用の関係を確認するTK(Toxicokinetics)になります。つまり、in vivoスクリーニング動態では、PKを指標に薬物動態を考え、TKを指標に安全性の最適化を目指します。さらに、薬物の生体に及ぼす影響やその作用部位、作用機序など薬理作用を研究する薬力学(Pharmacodynamics)に薬物動態の考え方を加えPK/PD解析による至適投与法の探索があります。

経口剤の有効血中濃度を考える場合、まず実験動物に経口投与し血中濃度推移を確認します。ただし、血中濃度は有効性を示すと同時に安全であることも大切です。そして小動物のげっ歯類(マウス、ラット)と大動物の非げっ歯類(イヌ、サル)の間でPKを比較する時に、血中濃度は物差し(解析パラメータ)となり、さらに実験動物の結果をヒトに外挿する物差しとなります。

血中濃度の測定で、薬物の媒体、例えばラットの血漿を用いて分析する場合、同じ条件のブランク試料(正常ラットの血漿)を「生体マトリックス」として使用し、薬物の標準品を加えて標準液を調整します。分析バリデーションの詳細は専門家に委ねますが、特に注目したいのは、定量下限の重要性です。生体マトリックスには様々な生理物質が含まれており、夾雑物質となり分析の精度を落とします。

血中濃度の分析では、定量上限に加えて定量下限が正確であることに注意を払います。この定量下限について、薬物投与後の遅い時間に有意な血中濃度が検出されると、消失半減期が大きくなります。そうなると、単回投与から反復投与時の定常状態の血中濃度を推定すると高濃度になります。このような結果が真実か否かは薬物動態特性に大きな影響を与えます。さらに、臨床検体では、併用薬や食事の影響も大きく、生体マトリックスの分析精度に注意して定量下限を設定することが重要です。薬物動態は用法用量の設定に影響を与えます。

In vivoスクリーニング動態で、薬物投与後に経時的に血中濃度を測定するとき、できるだけコンパクトに試験を行いたいものです。そこで、小動物(ラットなど)では、1群(1薬物)に3個体を準備して、1個体から経時的に微量採血を行い、LC-MSを用いた高感度分析を行って定量を試みます。さらに、代謝物の推移が重要な場合、スクリーニング時点での代謝物標品の準備は難しく、例えば、ピークレスポンスファクターの手法で簡易定量を行ってはどうでしょうか。代謝物の濃度測定は、柔軟な段階的アプローチ(Tired approach)で実施することが提案されています。

測定時点の考え方について、経口投与では、まず、投与後1、3、6、24時間時点の採血を計画し、消失半減期が大きい場合は48、72時間時点を考慮します。また、微量採血であってもヘマトクリットへの影響が少ない範囲での採血量と採血回数を心がけます。但し、消失半減期を求めたい場合は、消失相に少なくとも3点の測定時点があり、対数表示で直線的になっていることが重要です。そこで、投与後1、3、6、8、12、24時間時点などから選択します。

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