基礎からのGVP【第6回】

2021/07/16 その他

前回に引き続き、GVPの基幹となる自発報告の情報収集に関する手順について解説をする。

情報の収集II

1.情報の収集

GVP省令
(安全管理情報の収集)
第七条
 第一種製造販売業者は、製造販売後安全管理業務手順書等に基づき、次に掲げる安全管理情報を安全管理責任者又は安全管理実施責任者に収集させ、その記録を作成させなければならない。
一 医療関係者からの情報
二 学会報告、文献報告その他研究報告に関する情報
三 厚生労働省その他政府機関、都道府県及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構からの情報
四 外国政府、外国法人等からの情報
五 他の製造販売業者等からの情報
六 その他安全管理情報

2.情報の種類ごとの業務手順
(1)自発報告 ~情報の収集I~
(2)文献・学会報告
医療関係者が経験した副作用症例や、研究成果等を学会で発表したり、学会・学術誌に投稿し公表するなど、様々な形で安全性に関連する情報が発信される。これらの情報を可能な限り網羅的に収集する体制を構築することが必要である。ここで敢えて「安全性に関連する」としているのは、臨床的な副作用の発生のみならず、動物実験等の非臨床的知見から副作用等の発生が予見される情報についても、その収集範囲に含まれているからである。
1)定期的文献データベース検索による情報抽出
i) 国内情報
JAPIC等の文献検索サービス会社に、収集の範囲を明確にして対象とした各種国内文献データベースを一定の頻度で定期的に検索することを依頼し、情報を網羅的に確認する方法がある。これをSelective Dissemination of Information(SDI:選択的情報提供)というが、検索のための検索式は重要な収集基準となるため、情報の収集量も考慮し、「製品名・一般名」のみ、「臨床試験」、「副作用・有害事象」、「相互作用」そして「毒性」、「安全性」と組合せ、決定する必要がある。この検索式検索頻度の取決めそのものが重要資料となる。
ii) 海外情報
海外の文献についても、国内と同様に検索式を定め各種海外文献データベースを対象としてSDIを依頼し、可能な限り情報を収集する必要がある。ここで問題となるのは、言語の範囲である。一般的には多くの場合、英語での公表が基本になるが、他の言語での情報もあることから、その収集体制を確保しておく必要がある。国内で販売している製品の状況により異なるのでその製品ごとに概ね以下の基準で対応している会社が多いいと思われる。

  • 特に海外関連会社や提携会社がない場合
    原則、英語による公表文献データベースを対象としたSDIを依頼する。ただし、最近は他言語で発表されている情報であっても、概要については英語のものが多いいことから、収集できる範囲は広くなっている。
  • 販売承認保持者(Marketing Authorization Holder:MAH)が日本企業の場合
    原則、英語による公表文献データベースを対象としたSDIを依頼するとともに、海外導出先企業に、共通検索式による英語以外の現地言語に関する文献調査を依頼し、必要な情報を収集する。なお、英語圏に関連企業がある場合は、英語等の語学上の困難さもあることから、当該企業に依頼できるものは依頼し、簡便に収集していることもあ
  • MAHが海外企業である場合
    MAH自身が、全世界の文献情報を対象とした安全性関連の情報収集の義務が課せられていることから、MAHより日本語での公表文献の調査が依頼されているので、国内情報の手順で情報収集し、これをMAHに提供する必要がある。そのかわりMAHより海外での公表文献で対象となる文献情報が提供されるよう、連携体制を整えて情報収集する。

しかしながら、いずれの場合も、最終的な情報収集の確認・責任は自社にあるので、検索した結果が的確に受領されているかを確認すること、また、必要により海外文献検索についても情報収集できる体制を保持することも考慮する必要がある。

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執筆者について

草間 承吉

経歴 医薬品、医療機器、医薬部外品等の開発から製造販売後までの安全確保業務を黎明期から30年以上にわたり幅広く経験・管理・監督してきた。この間、業界活動においては製薬協PMS部会や東薬工医薬品安全性研究会、日薬連安全性委員会等でDSUやPMS担当者研修講座の設立等にも関与した。これらの経験を生かし15年前にPMSフォーラムを設立し、製薬企業等からの業務相談に対応しながら、指導・教育に努めている。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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