医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて- 【第6章-2】

詳細設計・建設  ※技術的な話ではなく、PJ遂行について
6.4 実行予算管理                            

プロジェクトマネージメントとは時間とコストをバーター(交換)しながら全体最適化することであるといっても過言ではない。時には時間をお金で買うという判断も必要となってくるのである。よって、プロジェクトには期限と予算が必ず存在し、プロジェクト責任者はそれらを管理、時には決断することが重要である。まず、施主は初期段階でおおよその投資費用を推算する。この段階ではまだ投資判断はされない。その後、コンサルタントに基本計画と基本設計を進めさせて徐々に投資コスト予測精度を高めていくのである。最終的には実際の工事会社からの正式見積を得て、トップマネージメント投資承認を取得することが通常である。ここで一旦社内承認を受けるとこの予算額を超過することはプロジェクト担当者としてはあまり良い話ではない。よって、多少の追加費用発生リスクも見込んで予算編成を行うことが通例である。この時のリスクを金額に変換する作業は経験がないとなかなか難しい作業であるので、コンサルタントにアドバイスを求めることも必要となる。案件によってリスクは異なるが経験的には5~10%が適正範囲であろう。

コントラクター・サプライヤから見積書が提出されてくるが、そこにはVE(Value Engineering)と称してコストダウンアイデアも盛り込まれていることも多い。施主から見れば、ありがたい有意義な提案である一方、単に仕様を落とした提案であることも少なくないので技術的にVEの取捨選択能力が求められる。この場合も経験あるコンサルタントを活用したい。

以上を経て実際に契約が締結されると、それ以後は、施工会社からの追加費用クレームマネージメントとなる。施工会社側からの追加クレームを皆無にすることは不可能であり、それを最小限にする継続的努力が必要である。施主の承認遅延がクレームにつながることも少なくないので承認を求められた場合には、速やかに合意されている期間内に回答することが重要である。プロジェクトの最後になって突然クレームを受領しても社内トップマネージメントへの説明に窮してしまうため、遂行中定期的に追加項目協議をコントラクター・サプライヤ側と開催することは健全なプロジェクト運営にも有益となるはずである。

プロジェクト遂行の実行予算管理は、企業との交渉も度重なるためかなりストレスが溜まる役務である。プロジェクト責任者は個々の契約条件も精読し、交渉シナリオを描く力量も必要である。

 

 

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