ゼロから学ぶGMP【第3回】

3. GMPの国際的調和
 GMPや医薬品の品質保証の分野においてもグローバル化が相当なレベルにまで達していることは周知のとおりです。以前からある国で製造される医薬品を他国に輸出する場合は、原則的には原産国の国としての品質保証体制がいかなる状態にあるかは問われずに、それぞれの輸出先の規制当局の査察を受ける必要があり、相手先国が増えれば増えるほど、この手続きが増えることとなり、面倒な作業となっていました。また、国内では2005年の旧薬事法の改正で製造承認制度から製造販売承認制度に変更になったことから、製造販売承認ホルダーは製造所を持つことが必須条件ではなくなり、原則的には世界中のどの地域の製造所にも製造委託が可能となり、我が国においても医薬品の国際化がさらに進むこととなりました。これまでもMRA(日・欧州共同体相互認証協定)やMOU(GMP調査等協力覚書)があり、ある程度進められてきましたが、ここ数年さらにグローバル化が進められてきました。その動きがPIC/Sであり、ICHです。

3-1. GMP省令とPIC/S GMP
 PIC/SはもともとEU内でのGMP要件をできる限り統一し、査察の相互認証を可能とする目的で結ばれたPIC(Pharmaceutical Inspection Convention)が基になっています。ただしこれは法的拘束力をもっていたため、EU区域外での適用には無理がありました。そこで法的拘束力を持たないPIC/S(Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme)が結ばれました。PICが発足した時点では加盟国は10か国でしたが、その後PIC/Sが各国の規制当局や製薬企業にとってもメリットが大きいことが認識され、多くの国が参加するようになりました。最大の契機は2011年のFDAの加盟です。これでPIC/Sの立場は確固たるものとなりました。
 一方国内でもPIC/S加盟に向けての動きが始まりました。2012年2月には監視指導麻薬対策課から「PIC/SのGMPガイドラインを活用する際の考え方について」と題された事務連絡が各都道府県あてに発出されました。この事務連絡の内容はPIC/SのGMPガイドラインの趣旨を十分理解してGMPを運用することを求めており、当局の査察においてもPIC/SのGMPガイドラインを基準として指摘することもあり得るとしていました。この時点では国内の整備がなされていなかったわけですが、その後2012年3月にPIC/Sへの加盟申請を行うとともに法的整備が進んでいきます。
 まず、2013年8月にはPIC/Sの内容を盛り込んだ施行通知「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令の取扱いについて(薬食監麻発0830第1号)」が出され、これまでの施行通知が大きく改正されました。次いで2013年12月にはこの施行通知に基づく「GMP事例集(事務連絡)」が発せられ、これで国内におけるPIC/S対応が法的拘束力を持つこととなりました。そのような経緯を経て2014年5月に日本のPIC/Sへの加盟が承認されました。ただしPIC/Sへの対応においてGMP省令そのものの改訂ではなく、その解釈変更によりなされたのは多少違和感を感ぜずにはいられません。
 PIC/Sの内容についてはGMP省令の個々の条文の解説の中で述べることとしますが、これまでの国内のGMPの考え方に追加された主な点は以下の通りです。
   1) 品質リスクマネジメントの考え方の導入。
   2) 製品品質の照査
   3) 原料の供給者管理
   4) 参考品の保管対象の原料等への拡大

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