医薬品開発における非臨床試験から一言【第9回】

創薬における非臨床研究はヒトへの外挿が永遠のテーマであり、薬理作用と安全性の推定のため多くの努力を払っています。しかしながら実験動物とヒトは歴然とした種差が存在し、より安全な臨床試験の実施と、医療現場への安全な新薬の提供のためには、in vitro研究を含めた非臨床試験分野での創薬科学の進歩が大切な課題です。今回は薬物相互作用の解明をテーマに、ヒト肝細胞を用いたin vitroでの酵素誘導の評価方法について解説いたします。

非臨床試験でヒトでの薬物の代謝反応や薬理・毒性反応の研究は、動物実験に加えてヒト試料を用いたin vitro研究から臨床予測指標を得ています。例えば、肝臓の薬物代謝酵素であるCYP3A4などのCYP酵素群は種差が大きいため、ヒト肝ミクロゾームまたはヒトCYP発現系を用いた研究が必要となります。薬物相互作用とは薬物間相互作用とも言われ、薬物が他の薬物の薬理・毒性作用に影響を与えることを指し、相互作用を受ける側と与える側が考えられます。また、薬物相互作用には阻害作用と誘導作用の2種類があります。

阻害作用のin vitro研究では、前述のヒト肝ミクロゾームまたはヒトCYP発現系を用いて阻害反応の程度(強弱)と阻害様式(競合阻害・非競合阻害)を確認し、さらに臨床使用に及ぼす影響を推定します。必要なら臨床試験で阻害薬と被阻害薬を同時投与(どちらかが開発品目)して阻害の影響を確認します。

代謝酵素の誘導作用では、まず反復投与動物試験で典型基質の代謝活性の変化を検討することを思いつきます。しかし代謝酵素の種差もあり、動物実験では肝臓肥大などの毒性試験における毒性作用のメカニズムを解明することができても、ヒトへの外挿は難しいようです。一方、ヒト肝細胞初代培養系を用いた研究は普遍的になってきたものの、試料入手面と経費面で制約を受けます。お気づきのように、阻害作用はヒト試料を用いた短時間の実験に対して、誘導作用は細胞培養による長時間の実験になります。

誘導試験では、ヒト肝細胞を24 wellプレート(1枚の培養プレートに24個の小さな培養区画がある)に播種して、2日以上培養して細胞を接着し安定させた後に、細胞培養液に基質となる薬物を添加し、培地中の代謝物を測定する(活性測定)。あるいは肝細胞中の代謝酵素の量を測定します(タンパク測定)。このような方法は、直接的に薬物代謝の程度を測定でき、培養細胞の1 wellで幾つかの代謝活性を同時に測定することは可能です。しかし、培養時間の経過による活性の低下が著しいために、評価において培養時間と測定感度の課題があります。また、酵素タンパクの消失は薬物濃度と相関が弱いため、誘導からの回復を評価することは難しいようです。

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