医薬品工場建設のノウハウ -プロジェクトの成功に向けて-【第4章-4】②

【第4章-4】② 再生医療、細胞医療の施設構築について

再生医療や細胞医療について、これまでの施設構築のノウハウから、検討項目を示し、設備構築におけるポイントを概説する。
尚、再生医療等製品の製造所の構造設備については薬局等構造設備規則第14条に規定されており、薬機法による製造業の許可の要件となっている。

1.   再生医療、細胞医療について
  iPS細胞やES細胞のような幹細胞を軟骨、表皮、神経等の体細胞に分化させ、
  医療に応用する技術は再生医療として急展開で進んでいる。
  また、上記の軟骨や表皮の応用の他、血液内の単核球分画を採取し、この単核
  球を体外で培養し、投与することで、癌等の免疫治療に応用する細胞医療、免
  疫治療も実際に応用が進んでいる。再生医療、細胞医療においては、ある患者
  から採取した細胞を培養し、もとの患者に使用する自家細胞のケースと採取し
  た細胞を培養後、不特定の患者に使用する他家細胞のケースの二通りがある。

2.   再生医療、細胞医療の製造に必要な機能
  再生医療や細胞医療の製造においては、必要な工程室、設備は次の通りである。
  ・細胞保管庫:セルバンクとして、iPS細胞や採取した単核球細胞(液体窒素
   保管庫)
  ・培養資材保管室:ディスポーザブル培養容器等
  ・培養液調製室:培地秤量器、オートクレーブ、蒸気滅菌不可材料の添加用無
   菌ブース
  ・細胞接種室:細胞接種用無菌ブース
  ・培養室:CO2/O2インキュベータ等
  ・培養細胞の保管庫/包装室
  ・廃液処理室、洗浄室
 
 上記で示した中で、検討の必要のある項目は以下の通りである。
 ・無菌環境を維持するために、清浄度グレード
  Aを担保するアイソレータまたはRABS(クリーンブース)が必要となる。
  再生医療や細胞医療においては、細胞接種を無菌対応のロボットにて自動で行
  う試みも開発されているが、人の操作で行われるケースが一般的である。人の
  無菌操作において、万一の微生物や異物のコンタミネーションを防止するため
  には、アイソレータを利用することが望ましいとの意見がある一方で、アイソ
  レータの過酸化水素による除染後のわずかな過酸化水素残留が、細胞の変異を
  起こすのではないかとの懸念もあり、培養される細胞の特性に応じて検討が必
  要である。なお、無菌操作を人が行う場合は、SOPの確立や無菌操作の習熟等
  が必要なことは言うまでもない。

 ・細胞の保管に於いては液体窒素下における極低温(-196℃)の環境が必要とな
  るが、この保管の際に細胞を封入したクライオチューブを液体窒素に浸漬する
  ことにより、クライオチューブの劣化を招き、その結果、亀裂等の原因により
  チューブ内に液体窒素が漏洩して細胞の汚染を招く懸念がある。、また、チュ
  ーブ内に液体窒素が漏洩した状態でチューブ取り出すと室内との温度差により、
  チューブの膨張破裂を招き作業上の危険も考えられる。細胞の保管条件に加え
  て、この点からチューブの耐性、低温条件、保管期間並びに取り出し時の温度
  条件とハード上の対策、取扱い規定等について検討しておく必要がある。

 ・自家細胞の場合は、患者の特定が必要となるため、培養の継体において、ID
  を付与して混同防止を図る必要性がある。特に、インキュベータ内での混同や
  保管後の取り出し出荷の際の混同防止策を検討する必要がある。

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