初めてのGDP(医薬品適正流通基準)【第1回】

2020/01/31 製造(GMDP)

1.はじめに

 わが国で医薬品の適正流通(GDP)ガイドライン(以下、GDPガイドライン)が2018年12月に厚労省より発出され、はや1年が経過しました。GDPガイドラインは法的に強制力のあるものではなく、企業が自主的に取り組むべきガイドラインですが、関連する様々な企業でGDPを検討され、対応されてこられてきたと思います。このGDPが対象とする業界は幅広く、医薬品の製造販売業のみならず医薬品卸売業界、倉庫・輸送業界、設備機器業界等、多岐にわたります。そのため、GDPが元々医薬品の品質確保を中心とした医薬品業界寄りのコンセプトであることもあって、他業界の方々から、GDPとして何をすればよいのでしょうか?GDPガイドラインを読んだけれどもよく分からない、といった声をよく耳にします。
 筆者は2016年から現在に至るまで、厚労省の厚生労働行政推進調査事業「医薬品流通にかかるガイドラインの国際整合性に関する研究」に参画し、GDPガイドラインの制定にも関与してまいりました。こうした経験を背景に、GDPガイドラインに基づきながら、GDPとは何か、何をすればよいのか、ということを皆様方と考えてゆきたいと思います。

2.GDPとは?

 GDPはGood Distribution Practiceの頭文字を採った略語で、医薬品の適正流通と訳されています。医薬品は、工場で製造された後出荷され、倉庫業者と輸送業者を介しながら卸業者を経て医療機関や薬局に届きます。この出荷後から医療機関や薬局に届くまでの品質確保の基準がGDPなのです。工場における医薬品の製造に対してはGMP(Good Manufacturing Practice)という品質基準がありますが、工場を出た後の基準がGDPということになります。GDPはGMPを補完するものという言い方もでき、両者を合わせてGMDPということもあります。
 GDPの範囲としては医療機関や薬局から患者さんが受け取るまでも含めるべきかもしれませんが、この経路は個々に事業者がコントロールできないので、通常はGDPの範囲に含めません。また、医薬品の原材料が工場に届く過程もGDPの対象とする考え方もありますが(広義のGDP)、わが国のGDPガイドラインはこれを対象としておりません。この過程は供給者管理としてGMPが対応することになります。
 先ほど「工場で製造された後出荷され」と言いましたが、厳密にいうとGDPガイドラインでは、対象は「市場出荷」後の医薬品です。工場で製造された医薬品は「製造所出荷」され、その後、製造販売業者によって「市場出荷」されます。少々分かりづらいかと思いますが、市場出荷の手続きが終了し、工場にあった医薬品がトラックに載った時点からGDPが始まるとイメージしていただければよいかと思います。
 なお、GDPガイドラインの対象は薬機法で規定された「医薬品」です。具体的に言いますと、医療機関等で使用され処方箋薬局等で交付される医療用医薬品(医療用ガス含む)、市中の薬局等で販売される一般用医薬品(OTC)、体外診断用医薬品、ということになります。他方、医療機器、医薬部外品、化粧品、再生医療等製品、臨床試験に用いられる治験薬、動物用医薬品等は対象外です。もちろん対象外であっても、これらの物品の流通に関してこのGDPガイドラインを参考にすることは可能です。

 




 

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執筆者について

小山 靖人

経歴 小山ファーマコンサルティング代表
NPO-QAセンター顧問
1979年藤沢薬品工業株式会社(現アステラス製薬株式会社)入社、責任者として無菌製剤の製剤化研究、並びにGMP及び治験薬GMP全般に関する品質保証業務に従事。2003年日本イーライリリー株式会社に入社、開発QAマネージャーを担当。2007年塩野義製薬株式会社に入社し、金ケ崎工場の品質部門長を経て、本社部門の品質保証部にてGQPに関する製造所管理業務に従事。2019年、小山ファーマコンサルティングを起業。
この間、厚生労働科学研究「医薬品・医薬部外品製剤GMP指針」を座長として取りまとめ、厚生労働省より発出 (2003~2006年、主任研究官 檜山行雄先生)。厚生労働省の「PIC/Sガイドライン比較分析ワーキングチーム」に参加(2010~2011年)、また厚生労働行政推進調査事業「GDP国際整合化研究班」に参画し(2016年~現在)、GDPガイドライン発出に関与。日本薬剤学会「製剤の達人」受賞(2011年)、薬剤師、日本PDA製薬学会代議員。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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