医薬原薬の製造【第9回】

9 溶媒の排出規制法令
 

 環境を守ると一口に行ってもいろいろな視点があり、それぞれの視点から法律が作られています。それぞれの法律で、指定物質が存在して、非常に複雑です。これらを整理した上で解説していきたいと思います。

9-1 水質汚濁防止法

 工場及び事業場から公共用水域への排水および地下への浸透水を規制することにより、公共用水域及び地下水の水質の汚濁の防止し、国民の健康を保護、生活環境を保全することを目的とした法律です。また事業場から排出される排水に関して、人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定められています。この法律では排水中の濃度を規制する排出基準が設けられています。排出基準と良く混同されるものが、環境基本法16条で制定されている、環境基準です。環境基準は、達成することが望ましい基準として制定されておりますが、排水基準は事業場が守らなければいけない基準となっています。環境基準濃度は、排出基準濃度のおよそ1/10になっています。環境基本法は、事業場が届出、濃度測定義務など直接に実施する義務を規定してはいないので、ここでは触れませんが、排出基準よりもさらに厳しいということを覚えておくことが必要です。
 

 水質汚濁防止法では、有害物質28物質(排出基準あり、事故時の措置基準あり)、指定物質55項目(排出基準はないが、事故時の措置基準あり)が指定されています。塩素系の多くの溶媒が有害物質に含まれており、排出基準が適応されています。排出基準は、添付の、溶媒排出基準表以下のPDFファイルの排出基準に示してあります。この法律には、都道府県による上乗せ規制条項があり、自治体により排出基準は違ってきているのが現状です。また達成することが望ましい環境基準も設定されています。

 この他、生活環境項目として、pH、BOD,COD,SS,ヘキサン抽出物等が規定されています。これらの項目は、特定の有機物の濃度を規定するものではなく、有機物すべての排水中濃度を規制するという考え方で、規定されています。これらの項目の基準値を超えることは法律に違反することになります。これらの基準も、自治体による上乗せ規制が存在しますので、自治体によって規制値が異なります。また、これらの項目についても、達成することが望ましい環境基準が設定されています。
 

  原薬工場で一番問題になるのがこの法律です。特に塩素系溶媒の排出基準は非常に厳しいので、塩素系溶媒を使用する場合は、注意をしてかからないと、法律違反を犯すことになります。規制基準は以下の溶媒排出基準表の排出基準をご覧ください。
 

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