医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第49回】

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「国内企業と国際的な企業のSDS情報のレベルの違いについて」


1.製薬企業のあるべき姿

製薬企業の国際化が進む中、企業の多様化を配慮した製薬工場の各種取り組みが求められるようになってきました。製薬企業、特に工場や試験室では大変厳しいGMPの法律を守り、患者様の医薬品使用に対する安全品質を担保せねばなりません。同様にHSEの運用についてはリスクベースの継続管理ですべてのリスクは許容できるレベルに低減して運用することが従業員の皆さんの健康と安全を守るために必須となります。そのためにはHSEで求められているのは製薬会社で働くすべての人々の健康被害の予防です。これはGMPだけでは達成できない課題です。

CMR物質のオペレーションと曝露リスク
CMRとは発癌性、変異原性、生殖毒性のある物質
重要課題:健康被害を防ぐ為の取扱い、保管及び廃棄に留意が必要

GMP患者様の安全   HSE: 従業員の健康安全を守る

医薬品製造を大なり小なり行う会社にとっての社会的責任・使命は医薬品の安定供給と製品の品質確保ですが、そのための原薬や試薬のオペレーションを行うメーカー従業員の健康安全環境が守られていて、初めて社会的責任や会社の使命が達成できるのです。工場や試験課で行われている業務に使用される原薬や試薬には従業員の方々の健康被害リスクが多く存在しています。今回は特にその中でCMR物質の保管管理、オペレーション上行うリスクアセスメント定性評価の為のSDS情報の重要性をクローズアップしてみたいと思います。

先ずは原薬や試薬のメーカーで発行されるSDS情報と国際的機関のGHS情報です。 医薬品は使い方を間違えると死亡のリスクや健康被害リスクが有ることを世界中の誰もが知っています。又、話題になりにくいのは、この医薬品を作る人々の健康にもリスクを伴う事を世界中の人々が知ることも重要です。とりわけ、化学物質や医薬品のリスクについて一般人が知ることが容易なのは添付文書ですが、その原薬についてはあまり一般の方々は詳しくは知らないでいるという現実があります。
少なくとも法律で求められているような情報は世界中のすべての人々に知ってもらうよう図る事が各国の政府や企業の重要な使命だと筆者は考えています。

それがSDSであり、GHSです。

医薬品工場やその試験室では数多くのCMR物質(発がん性、変位原性、生殖毒性)が使用されていることがあります。CMR物質管理は、先ずはSDS情報等によりその毒性のOEB (職業曝露帯)OEL(職業曝露限界値)により封じ込めが必要になります。つまり、封じ込めに必要な建物構造の床壁天井をリークの無い気密性を確保した上で専用空調、特に吸排気にHEPAフィルター99.95%濾過効率以上で排気は循環せずAll排気する。人・物の出入り口は前室をエアーロックし、外の試験室とCMR室間を差圧7~10Paで出入りの際のCMR物質リークをブロックする必要があります。ソフト面はRPEやPPEの程度を曝露定性評価、定量評価結果N4のデーターで判定をしてOEL以下であることが前提で、出来る限りOELの値を極限値迄確認することが重要です。それはCMRではOEL値以下の定量評価分析結果でも健康への影響リスクが存在するからです。事例としては妊婦さんが奇形児を出産するリスクが残るからです。そのような健康被害リスクを残さず仕事が出来る環境を作ることが企業としての社会的責任であり、責任を取るのは関係者特に工場長さんということになります。

この重要なSDSの情報ですが、国内製薬企業、原薬工場、試薬製造会社で16項目の情報は当たり障りのない情報のみならずOEB、OELとOEL以下でも健康被害のリスクが有る物か否かの表記(G1.G2)、感作性、粉塵爆発リスク(Kst MIE)などの重要な情報がSDSに記載されていることが大変重要です。

2.国内製薬企業の現状

しかし、日本の健康被害に対する意識はまだまだ低く、これからは訴訟になることが増えてくるのではと筆者はみています。それは科学的に評価して根拠を数字で分析結果を捕らえた上でリスク低減対策を実施し、再評価によりリスクが許容できるところまで低減できたことをマネジメントシステムおいて廻す。このとき、原薬や化学物質のOEB/OELを情報としてSDSに記載が無い事を問題視せず済ませている又は重要情報入手無しで評価してはリスク低減が出来ていない事に気がついておられない製薬工場があまりにも多いことに驚きます。そして、許容できるところまで低減できたとして不適切な保護具を決定し、健康被害リスクのあるオペレーションに入る。これが問題であり、国内の医薬品製造工場の健康被害リスクは危機的状況で、医薬品の生産を行っていることを知っている欧米の先進グローバル企業は見下していることでしょう。知らないが為に注意する・気にかける・大丈夫だろうなどと漠然とした根拠で判断してオペレーションを現場にやらせているマネジャーや工場長さんがまだまだおられるようです。さて、“学んで下さい“原薬のOEB4,5レベルのOELは1~10μg/m3, 0.1~1.0μg/m3の内、目に見えない微小粒子径(0.3μm以下の直径など)でHEPAフィルターを通過するもの、浮遊していて床へ落下してこないものが発塵している試験室で曝露定性評価や定量評価を女性が働いているのにやったことの無い試験課の存在もあるようです。

国際化多様化の時代に突入した現在、GMP関連の法規制を遵守していればすべてOKと考えている企業の上層部、特にPosition Descriptionで重大な責任ある立場は工場長さんです。工場長さんにとって従業員さんの健康を守るのは第一優先課題です。試験業務よりも優先します。又、最近では従業員さんは国際化多様化により日本人のみではありません。ここまで優先順位を明確にしてVisionに掲げている国内医薬品製造工場の工場さんは少ないと聞いています。さて、国際化多様化の時代に従業員さんの健康被害が発生した場合、その立証責任はどなたにあるのでしょうか?筆者が調べたところ、工場長さんはその責任業務の中でどのような物理的科学的評価データーに元図いた健康管理をさせてきたのかをその分析データーを示して立証しない限り、責任を逃れることは難しい時代になりました。記者会見で頭を下げている責任者の姿は誰も見たくはありません。一方、国は化学物質で健康被害が発生しないよう具体的ではありませんが企業に通達等でCMR物質をリスクさセスメントして安全管理するよう求めています。つまり、健康被害が発生した時は企業が責任を問われ、国の責任は問われることが無いよう先手を打っています。知らなかったでは済まされない、追い詰められた状況であることに気が付いておられない工場長さんや責任者の管理職者の方々は「まさか我が社は取り上げられることはないだろう」と高を括っておられるようですね。日本国は親告主義の国ですので訴える人が少なかった歴史が文化としてありますが、欧米は昔から訴訟は権利という文化であり、すぐに裁判にする文化です。国際化により、弁護士さんの営業が活発化してきていることも影響していると思いますが、日本も欧米並みに訴訟件数が増大化してきているようです。

 

 

執筆者について

経歴 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

連載記事

コメント

コメント

投稿者名必須

投稿者名を入力してください

コメント必須

コメントを入力してください

セミナー

eラーニング

書籍

CM Plusサービス一覧

※CM Plusホームページにリンクされます

関連サイト

※関連サイトにリンクされます