プレフィルドシリンジ製剤の基礎からリスクまで【第2回】

2017/10/20 製剤

 プレフィルドシリンジ製剤は、前項で述べたように従来の注射剤が抱えていた重要な課題のいくつかを解決した優れた製剤である。
 そしてその構成は多くの部品からなっている。図1には基本的なプレフィルドシリンジ製剤の図を再掲した。

図1 プレフィルドシリンジ製剤

 今回から数回をかけて、その「構成要素とその部材」について稿を裂く。なぜこの説明に力を入れるかであるが、それは、プレフィルドシリンジ製剤のリスクの多くが、この「構成要素とその部材」に由来するからである。
 言い換えると、この「構成要素とその部材」の知識なしでは、適正な品質保証を行う事は極めて難しい。
 この稿は、初心者の方が適切なプレフィルドシリンジ製剤の品質保証が実施できるようになるための知識を提供することを意図している。そのため、ここで構成要素と部材について、作者ができる限りの知識を提供する。
 

1.プレフィルドシリンジ製剤の構成

 図1を見ると、プレフィルドシリンジ製剤は以下のような部材から構成されることがわかる。
  ①針を安定に固定するためのルアーロック。
  ②注射剤容器の“蓋”の役割をするトップキャップ。
  ③保管時には注射剤容器の役割を果たし、使用時には注射筒となるバレル。
   なお、指をかけるためのフランジは、一般にバレルと一体に成型されている。
  ④保管時には注射容器の蓋の役割をし、使用には薬液を押すガスケット。
  ⑤指をかけやすくするためにフランジに装着するフィンガーグリップ。
  ⑦ガスケットに装着しガスケットを押す、押し子の役割をするプランジャー
   ロッド。
  ⑧識別のためのラベル。
  ⑨内容物を保護するためのピロー包装。
   丈夫さを要求される場合には、樹脂を成型加工したブリスター包装が用いら
   れる。
  ⑩識別性、内容物の保護性、輸送性などを上げるための最外包装である紙箱。
 
なお図1は、針なし、ルアーロック付きプレフィルドシリンジ製剤の図であるが、針が付いたままで販売されるプレフィルドシリンジ製剤も存在する。
「針なし」の場合は使用時に針をつけて使用することとなる。「針つき」の場合は、輸送保管時は針の外側がプラスチック製のキャップで覆われており、使用時にそれを外して使用する。

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執筆者について

柳澤 徳雄

経歴 協和発酵、テバ製薬、バクスター株式会社などで、バリデーション、変更管理、逸脱処理、GMP教育、リスクマネジメント、クレーム対応、Quality agreementの締結、注射剤の技術開発などを担当、PDAではQA/QC委員会に於いてリスクマネジメントおよびQuality Cultureの検討、北陸勉強会に於いては原薬工場の監査の検討等に参加。この間、国内GMP適合性調査、海外当局による査察への対応・支援、海外製造所の監査にも携わる。ファームテクジャパン等の雑誌への投稿多数。東京薬科大学卒。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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