WFI製造プロせすへの思い【第17回】

2017/10/06 施設・設備・エンジニアリング

布目 温

 WFIへの思いを1年にわたり綴ってきました。いよいよ最終章です。
 最終章では、自主的な活動として安全なWFIをつくる姿勢を考えたいと思います。目指すべきは、お仕着せではなく、現場であれやこれや「プロせす」を考え抜いた先に見えてくる「WFIの本質」を求める姿勢です。まずは現状認識から入ります。
 
1. 製薬用水は決められている
 製薬用水の仕事を始めた頃、不思議に思ったことがあります。それは、他の純水用途と比べると、様々な取り決めがあることです。WFIの製造法しかり、WFIを貯留する条件しかり、送水配管の材質・形状しかり、勿論、「注射用水」・「精製水」との名称で呼ばれる水は、薬局方に収載されていて、性状・貯留方法・純度試験限度値・試験方法が定められています。
 この業界へ新たに参入した人にとっては、決められていることが都合よい面もありますが、基準に従って実施することに慣れてしまうと、なぜ、このような取り決めがされているか、自ら考えること自体が、おっくうになり、疑問を持つこともなくなる傾向がみられます。
 
2. FDAが決めた基準を守る
 ペニシリン・DDTに代表される医薬品が、米国から輸入されるようになり、日本の生活環境・日本人の健康が改善されました。戦後、長寿国へ至るきっかけとなった最たる要因とまで言われています。
 その次の段階、いよいよ高度成長期に入って、今度は逆に日本から米国へ医薬品を輸出するまでに至りました。
 米国は、外国から医薬品を輸入するとき、FDAが、医薬品を輸出する国へその都度出向き、米国国民の健康上の安全を目的として、海外の医薬品製造施設およびその運用方法について米国の製造基準に適合するかを査察しました。
 米国への輸入が認められると、その後も定期的にFDAが、日本の製薬会社へ査察に来訪しました。したがって、日本の製薬会社の品質管理・品質保証部門は、FDAからWarning Letter(警告書)が発出されないことが、至上命令となりました。これによって、日本の医薬品の品質は大きく向上したと言えます。
 この査察の際にベースとなるのが、FDAが定めたCGMPであり、これを補完するUSP,
各種法令、各種ガイドラインだったのです。
 
FDA : Food and Drug Administration ,CGMP : Current Good Manufacturing Practice
USP : United States Pharmacopeia
 

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執筆者について

布目 温

経歴 布目技術士事務所
技術士 衛生工学部門:水質管理
1972年栗田工業(株)入社、1992年野村マイクロ・サイエンス(株)入社。2011年布目技術士事務所(製薬用水コンサルタント)開設。製薬用水のスペシャリスト。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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