【第13回】GCP-SOPライティング - GCPで必要なSOPと作成技法 -

2023/11/03 臨床(GCP)

今回からは、「作成技法」の紹介をする。

GXPsのSOP
 GCP省令の運用を示した通知である「GCPガイダンス」を見てみると、手順書を「治験に係る各々の業務が恒常的に又は均質に、かつ適正に実施されるよう手順を詳細に定めた文書をいう」と定義している。この定義はGCPのみならず、GMPやGLPなどのGXPs、さらに臨床研究法と「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」でも同様の記載がある。このことから SOP(手順書)とは、業務をいつだれが行っても常に(すなわち、恒常的に)、同じ結果に(すなわち、均質かつ適正に)なることを目的として、作業や進行上の手順を詳細に記述した文書ということになる。したがって、今回からの「作成技法」の紹介は、GCPの他のGMPやGLPなどのGXPsのみならず、色々な領域の手順書にも応用できる技法ということになる。

SOPライティング
 ビジネスの世界に限らず日常生活において文章を書くということは誰もが行っている。紙に書くだけではなく電磁的に文章を書く(入力する)ことの方が、現代では圧倒的に多いだろう。文章を書くということは、誰かに何かを伝える手段である。たとえ日記であったり備忘録であったりしても、過去のでき事を記録し、近い将来の自分自身への情報の伝達手段といえよう。
 治験を開始するに当たっては治験実施計画書や治験薬概要書を作成し、治験が終了すれば総括報告書を作成する。これらの文章を作成することをメディカルライティングと呼び、そしてSOPを作成することを「SOPライティング」と呼ぶ。ライティングは単に文字を書き並べるだけではなく、「分かりやすく」したり「説得力」を増したりする必要がある。SOPライティングにももちろんこの考えは当てはまるのだが、日記や友人知人への手紙、あるいはビジネスでの報告書や議事録とは異なり、SOPは必要に応じて改訂することもある。したがってSOPライティングは手順を記述するのはもちろんのことであるが、常に改訂を念頭において作成しなければならない。したがって理解しやすく改訂しやすいSOP の作り方のことを「SOPライティング」と呼ぶ。

SOPのデザインと書式
 SOP は方法や手順を伝えるものなので、じっくり読んで理解するよりはパッと見て分かるシンプルな構成にすべきである。そのためにはSOPの表題(タイトル)はもちろんのこと、項目ごとに的確な見出しを付ける必要がある。一つのセンテンスは後述のように長文にならないようにし、長文にならざるを得ない場合は箇条書きにしたほうが良い。SOP全体のページ数も10ペ ージ以内にとどめるなどの工夫が必要であろう。また、必要により画像やフローチャートなどを利用して 視覚に訴えるのも良いだろう。
 1ページの文字間隔や行間隔などレイアウトも見やすくする必要があるが、これはMS-Wordで作るならばデフォルトの設定で良いだろう。フォントはMSゴシックやメイリオやArialなどの視認性の高いほうが良く、本文は10.5か11ポイント、見出しは11か12ポイントで記載した方が良いかもしれない。

うまい文章より分かる文章
 SOPライティングの基本となる代表的な技法を図1に示した1)。SOPは「恒常的に、均質に、適正に実施されるよう手順を詳細に定めた文書」だということを前述した。したがって、理解しやすい「分かる文章」を目指さなければならない1)。小説やエッセイのように文学的だったり感動を与えたり、あるいは参考書やビジネス書のように理知的だったり人生訓を教示したりする必要はない。
 議事録や報告書を読んでいて「結局なにが言いたいんだろう」と思うことはよく経験することである。書いた人(書き手)は会議などに出席しているが読んでいる人(読み手)は出席していない、という書き手と読み手の状況の違いを理解せずに書いているから分かりにくい文章になってしまう。つまり読み手のことを考えて作らないと、次のような分かりにくい文章になる。

  • これ、それ、あの等の代名詞が多い文章
  • 長文で、何度か読み直してやっと理解でき、時には理解できない文章
  • 話が前後する、すなわち時系列に書かれていない文章
  • 主語や述語の記載がなく、誰が何をするのかを読み手に推測させるような文章
  • 読み手が必要としている情報が書かれていない文章

 SOPは手順を示す文書なので、うまい文章である必要はなく、分かる文章でなければならない。書き手の意図したとおりに、読み手が理解して読んでくれるような文章を、内容に過不足なく、構成や流れも無理がないように書く必要がある。

 

 

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執筆者について

大場 誠一

経歴

株式会社エスアールディ 信頼性保証室 参与
旧GCP施行当時から国内の製薬企業で試験監査室長としてGCPとGLPの監査を担当。その後の欧州系製薬企業では信頼性保証室長としてGCPとGLPの監査の他、GMPとGPMSPの監査に携わる。そして後の米系CRO(開発業務受託機関)ではQA DirectorとしてGCP監査の責任者。現在は国内CROでGCPと臨床研究の監査、さらにGCP教育やSOPライティングの受託業務を専門としている。またGCPに関連した執筆や多くのセミナーでの講演活動、さらにDVDやe-ラーニングを用いたGCP教育に携わるなど、30年以上にわたってGCPに深く関わり続けている。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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