医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第43回】

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「日本国内製薬企業の人権尊重についての課題」


1、    製薬企業のあるべき姿

製薬企業の国際化多様化が進む中、国際社会は日本国内企業の多様性対応が大変な遅れを取っていることをよく知っています。又、日本の製薬企業工場でも国際化多様化が求められていることは周知の事実です。当面の課題は遅れを取り戻すことですね。そんな中、国内で企業の人権問題が少なからず取り上げられるようになってきました。芸能プロダクションの人権問題が新聞やテレビを賑わしています。欧米の国際基準や世界のグローバルスタンダードで仕事をしている国際的企業ではあってはならないことが、日本国内では起きるべくして起きています。なぜでしょうか?日本国内は多くの多種多様な規模の企業が存在しています。筆者が調べた国内企業の現状ですが、日本の企業数の内、約75%は従業員数10人未満の中小企業とのことでした。又、外国籍企業とこの多数の企業は株式上場をせずに所謂、同族経営が多いのも特徴です。さて、近年の医薬品製造企業に目を向けてみますと上記の同族経営の会社や株式の非上場会社が結構多いことに気がつきます。つまり、株式を親族で又は社長個人が100%保有している企業が結構多いことがわかります。これは日本の文化の一つでもあると思いますが、ワンマン経営と言われてきた企業の姿でもあると思われます。国際化多様化がすでに進んで来た日本国内で世界レベルのCSR(Corporate Social Responsibility企業の社会的責任)を達成するべき企業の現状は上記のような背景の企業が表面的ではなくGlobal Compact10原則等で人権侵害や社内の改革を図っているとは言いがたいことがおこなわれてきている事を厳しく受け止めなければなりません。これを言い換えれば国内法を遵守していればOKでは無く、国際基準やグローバルスタンダードを各国内法よりも厳しい基準で運用してゆくことがあるべき姿と言わなければなりません。上記のようなワンマン経営で同族経営、非上場で100%家族や社長が株を保有している企業は変革を図らずしてこれから10年後、50年後ましてや100年以上会社を次世代にまで存続させたいとお考えの社長さんには他人の意見をとりあえず聞く事が大切です。おそらく、社長さんは社内で何とかしようとまず考えられると思います。苦労して会社設立してまたは設立された先代の後を引き継いで来られた社長さんにとっては外部の専門家を入れることは会社を乗っ取られる心配をされることでしょう。「清水の舞台から飛び降りる覚悟」で(信頼できる)外部の専門家を招く、国際化多様化に対応出来るHSE(健康安全環境)アドバイザーに力を借りる。これらは勇気がいると思いますので以下の要件で進めるようお勧めしておきます。

  • 個人事業主と契約する事はリスクが3つ有ります。必ず株式会社と契約しましょう。
    なぜなら、支払い業務や保証業務、秘密保持、知的財産権、下請法の義務。注意すべきは弁護士、産業医、コンサルタント、無料の教育など個人事業主や個人に委託しない・契約しない・関わらない。
  • 必ず契約書に必要な記載事項として保証問題、暴対法が明記されていて、下請けを出来れば使わないことを明文化しておく。
  • 契約関係のある企業についてはサプライチェーンAuditで人権問題、児童労働、給与など差別問題、障害者対応、性差別問題など今回話題になっているような性的嫌がらせやハラスメントを的確に捉える事が重要。

上記は社内の社員が行う事に無理がありますので、上記のHSEアドバイザーなどの力を借りることをお勧めします。さて、国際化多様化対応を進める中、文化の異なる即戦力となる技術のある外国人従業員を採用してグローバルスタンダードを構築して物言う従業員が増加する社内で会社を信頼して働いてくれる環境を作りましょう。

企業求められる課題は数知れない時代となってきました。従業員が10人以下の企業で上記のような問題を立派に果たしている企業がいくつあるでしょうか。売り上げを達成することで労力を100%使いはたしている企業に多くを求めることが厳しいのは解っていても人数が少ない企業だから許される事は何一つありません。ましてや医薬品という生命を守ること、健康を守る事に寄与せねばならない医薬品を作っている企業の社会における責任は他の業種以上に重いと考えねばなりません。CSR企業の社会的責任を果たすことは時代が変わろうと求められ続けているのです。

これからの医薬品企業の課題

  • 近いうちに従業員の10%は日本国民である外国人
  • 外国人従業員が良い仕事をしてくれるような環境作り
  • 技術を持った即戦力となれる人の数は極小、社員の積極的な専門家育成教育の実施
  • 女性の活躍の場を積極的に拡大する
  • 女性が働きやすい職場を作らねばビジネスは継続してゆけない時代となった
  • 人権侵害、児童労働、差別問題(仕事の配分、給与、残業など)をサプライチェーン各社に公表を求める

人的多様性の課題は日本でも直視しなければなりません。アメリカ・EUをはじめとする各国で人権問題が原因でデモや暴動があちこちで発生しています。なぜ発生するのでしょうか? 原因を知ることから始める事が大切です。調べてみるといろいろな原因が多面的に存在していることが解ると思います。そこで、人的多様性の問題は国内のみならず、国外に多かれ少なかれ供給元・供給先・委託元・委託先など自社他社を問わず取引先が存在している現状があることがそのバックグラウンドとなります。芸能プロダクション問題でタレントさんとの契約を打ち切ったサプライチェーン各社が良い最近の事例です。重要な問題はサプライチェーンです。国内はもちろん海外のサプライチェーン各社における多様性の「責任あるサプライチェーン等における多様性」のためガイドラインです。お膳立てはできています。 製薬企業で注意すべきは日本国内のみ工場を持っている製薬企業も現在は多くの会社で海外の企業から原薬や資材を輸入している事例が少なくありません。どうやら魅力があるようで、2022年の現状で開発途上国での安価な委託生産や自社工場稼働など多かれ少なかれサプライチェーンマネジメントが必要な環境になってしまっているようです。

あるべき姿は世界中で各企業がその生産業務継続のためお互いに関係工場間・企業間でサプライチェーンAuditを行い、取引を行う相手の財務諸表や人権尊重などの調査により、従業員の労働条件や待遇などのリスクを特定評価し、予防とリスク低減、対策を講じるため人的多様性のプロセスをプログラムしたグローバルスタンダード(人種・国籍・性別・障害のある無しなどに柔軟に対応できる)を策定し、救済可能な会社運営を行わねばなりません。自社の多様性配慮をグローバルスタンダード化することで国内のみならず、世界中のサプライチェーン各社に働きかけることが近未来の企業活動を担保してくれるものと考えます。

 

 

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