エッセイ:エイジング話【第52回】

環境汚染とBOD試験

 昭和の早い時代に環境水汚染が深刻になりました。とりわけ、伊勢湾や琵琶湖など閉鎖系水域は年を追う毎に赤潮や藻の発生が進み、行政側も放って置けない状況になりました。
 特に、都市部に近い水域の河川は深刻であり生活排水・工場排水からの人工的な汚染の度合いを監視する必要が生じたのです。
閉鎖系水域:海水や湖水が滞り富栄養化が起こる湾や湖
 ここで、有機物汚染度合いを調査し規制する指標として、BOD,CODという2つの水質管理項目が使われました。私は検査室の先輩から2つの分析方法を実地で習いました。
BOD : Biological oxygen demand 生物学的酸素要求量
COD : Chemical oxygen demand 化学的酸素要求量

 文献によると、BODは湖沼河川の汚染指標としてCODは主に海域の汚染指標とされました。湖沼河川には有機汚染を分解する微生物が自然に存在しますから、海へ至る流域で分解が起こることを想定し、有機物を二酸化炭素へ分解する時に微生物が消費する酸素量を生物学的酸素要求量=BODとする、至極理に適った一般の人にも分かり易い汚染指標だったのです。
 一方で、海域では有機物を分解する微生物の働きは湖沼河川ほど活発ではありませんから、汚染指標として化学的酸素要求量=CODが用いられたと先輩から教えられました。
 CODBODに比べ検査結果を敏速に得ることができる大きな特徴があります。CODには2つの試験法があり、この2つのCOD値を測定し比較することにより、検体中に含まれる有機物の分解され度合=化学構造を推定することが出来るメリットがありました。ちなみに、この分解され度合はTOC分析においても測定法のポイントになります。
 CODMnは30分間+αにて、CODCrは2時間+αにて結果を得ることができます。BOD測定は予め検体を採取した水域に存在する微生物を植種した培養過程を伴いますから、検査結果を得るには5日間+αを要します。検体の生物分解性を細かく調べるために究極的な培養をする必要があるときは25日間培養を行う、BODu (u=ultimate)を測定することも実施します。たかが水の検査に、25日間も要するとは今の時代は考えられないことですね。

 

 

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