医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第35回】

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「日本国内製薬企業の人材の多様性対応についての課題」

1、  製薬企業のあるべき姿

製薬企業の国際化多様化が進む中、国際社会は日本国内企業の多様性対応が大変な遅れを取っていることをよく知っています。又、日本の製薬企業工場でも国際化多様化が求められていることは周知の事実です。当面の課題は遅れを取り戻すことですね。 そんな中、世界各国の輸出規制は企業を縛り上げ、行き場を失うかもしれない痛手を被ります。これを企業の底力でその痛手を軽減する方策をひねり出さなければ規制違反で法的制裁を受ける事になります。又、そのCSR(企業の社会的責任)上の批判を浴びる事にもなりかねない。輸出規制は各国により異なる。特定の国と取引を行ってゆくにはサプライチェーン(供給網)管理が重要で夫々の国の規制による暴走を抑止できるのは工場や製品規格にこだわらない社員の配置、世界中の国籍、人種を問わない組織作りや柔軟な資金の調達などなど確保する必要があります。混乱している世界の事情により国が国策として行う規制に対して、これを回避出来る代替品の検討や生産委託先を選択できるよう世界の各国工場の稼働状況を常に把握し、自在に役割変更出来る柔軟な組み替えの出来る基盤作りがフェアネス(公正さ)に基づくしたたかさが求められます。又、国家と渡り合うには機敏な判断と実行力が必要になります。さもなければ事業基盤を依存する国の言いなりになり、フェアネスを貫けません。多様な人材が臨機応変に対応できるサプライチェーンが企業のマネジメントに裏付けられていてこそフェアネスを追求する経営者の意思が世界をつなぐことになると筆者は考えます。人材の多様性に対応できる実力がなければ、そして人と物の太い交流が出来なければ企業は生き残れないのではないでしょうか。

人的多様性の課題は日本でも直視しなければなりません。アメリカ・EUをはじめとする各国で人権問題が原因でデモや暴動があちこちで発生しています。なぜ発生するのでしょうか? 原因を知ることから始める事が大切です。調べてみるといろいろな原因が多面的に存在していることが解ると思います。そこで、人的多様性の問題は国内のみならず、国外に多かれ少なかれ供給元・供給先・委託元・委託先など自社他社を問わず取引先が存在している現状があることがそのバックグラウンドとなります。重要な問題に気づいた方は次のステップに進んでください。答えはサプライチェーンです。国内はもちろん海外のサプライチェーン各社における多様性の「責任あるサプライチェーン等における多様性」のためガイドラインです。お膳立てはできています。 注意すべきは日本国内のみ工場を持っている製薬企業も現在は多くの会社で海外の企業から原薬や資材を輸入している事例が少なくありません。どうやら魅力があるようで、2022年の現状で開発途上国での安価な委託生産や自社工場稼働など多かれ少なかれサプライチェーンマネジメントが必要な環境になってしまっているようです。
あるべき姿は世界中で各企業がその生産業務継続のためお互いに関係工場間・企業間でサプライチェーンAuditを行い、取引を行う相手の財務諸表や人権尊重などの調査により、従業員の労働条件や待遇などのリスクを特定評価し、予防とリスク低減、対策を講じるため人的多様性のプロセスをプログラムしたグローバルスタンダード(人種・国籍・性別・障害のある無しなどに柔軟に対応できる)を策定し、救済可能な会社運営を行わねばなりません。自社の多様性配慮をグローバルスタンダード化することで国内のみならず、世界中のサプライチェーン各社に働きかけることが近未来の企業活動を担保してくれるものと考えます。


             
2,国内製薬企業の現状

しかし、日本の製薬企業にはESG評価が100点満点のところ、47点とフランスの調査会社の報告があります。又、特に日本企業はコストと効率を優先しており、フェアネス重視になっておりません。フェアネス重視に切り替え、コストは増大するがそれでもやるべきところですが、ためらっていてESG評価すら受けることをしない日本の製薬工場さんがまだまだ多いという現状のようです。つまり、日本の多くの製薬工場が国際化多様化に向けて企業活動を変革し、グローバル化出来ていないのが日本の現状です。 さて、ここ数年日本で生活する外国人の数が急増しています。コンビニでもスーパーでもレストランでも外国人労働者を見る機会が増えました。要因の一つは日本の社会課題である少子高齢化や結婚しない男女が増加等による労働力不足が挙げられるのでしょう。急増する外国人労働者に対する厳しい非難の声等(マナーが悪い、ごみをどこにでも捨てるなど)を聞きますがここが日本も切り口を変えないとうまくやってゆけない原因となります。マナーやルールはグローバルスタンダードや分かり易いSOPなどによる歩み寄った優しい指導力があなたに必要なのです。日本経済はもはや維持してゆけないからこそ政府は外国人の受け入れを拡大したことも日本の企業は考えなければなりません。日本は自国の経済を支えるためにも多様性を受け入れる土台創りはこれからの企業にとっても必須なのです。日本には古い文化があり、やらなくてもなんとかなるのではとかお金がかかるからという理由や外国人は言葉が面倒だからできる限り関わらないでいたい。サプライチェーンでの多様化対応構築の法制化が進む中、日本企業は責任ある供給・調査の取り組みが急務となっている。現在日本の製薬工場も低賃金労働を求めて、バングラデシュ・ベトナム・インドネシアへの製造委託をおこなっている。これは日本のみならず世界中の企業が製造業務を委託しているのが現状です。この現状で現地サプライチェーンでは人材の多様性対応に対する課題は大きく展開し始めているようです。しかしながら、いずれのスタンダード化もすすんでいない。

このサプライチェーンに評価なしで安価であるという理由で契約し、委託している日本の企業は見て見ぬふりをしてきたのでしょう。このサプライチェーン現場の一部で死亡者や再起不能な大怪我が発生しました。リスクが存在していることを評価せずに改善せずに契約関係を継続してきた事が問題になりました。11年には国連が「ビジネスと人権に関する指導原則」を発行承認しています。これにより、企業にはサプライチェーンの調達・製造・販売までを対象に人権と多様性に配慮することが求められました。2022年の段階でこれらが不十分であることが現状の問題です。

「指導原則」とは企業に対して事業活動とサプライチェーンに人権を尊重する事を求める法。

日本企業の現状

  • サプライチェーンに法的責任が生じる可能性が大きいのに他人事だと知らないふり。
  • サプライチェーンの中でリスクの大きい工場への関与が出来ていない。
  • 人権尊重への対処策や救済手段を持っていない。
    ・・・グローバルスタンダード化しガイドラインに従い実践する事が求められます。

何をやらねばならないのか? ESG評価から現状把握をやらねば始まりません。
 

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