空調エンジニアが空調エンジニア以外の人に空調を語る必須事項とは【第2回】

1.    前回の話題、今回の話題

前回の「その1」(2021/07/30)から1年以上経過してしまいました。
「その1」では、空調エンジニアにとっての湿度とは相対湿度(%)ではなく、絶対湿度(kg/kg’)であることをご説明しました。
今回「その2」では、空気の最重要因子は温度ではなくエネルギー(エンタルピ)である、というお話をしましょう。 
 

2.    中学理科の「エネルギー」について思い出しましょう

さあ、高校物理どころか中学理科の学習内容までさかのぼります。
「位置エネルギー」「運動エネルギー」「エネルギー不変(保存)の法則」という用語を記憶されていますでしょうか。概念的に何となくで結構です。
きわめて簡略化して1行で説明すると、
「位置エネルギー」:高いところにある物体がもつエネルギー、物体の(質量×高さ)に比例する
「運動エネルギー」:動いている物体が持つエネルギー、質量に比例し速さの2乗に比例する
「エネルギー不変(保存)の法則」:エネルギーはその形態を変え,また移動するが,エネルギーの総和はつねに一定である
中学理科の「エネルギー」は力学的エネルギーで、ある因子に比例して変化するので“比較的”分かり易いともいえるのですが、空調が扱う空気のエネルギーは熱力学的エネルギーになりますので、前回の「その1」で少しお話したように空気線図上で変化量を確認する必要が出てくる分ややこしくなります。先ずはややこしい部分を横に置いといて話を進めましょう。
 

3.    「位置エネルギー」と「空気のエネルギー」の似ている部分

「位置エネルギー」の「質量」と「高さ」を空気の「温度」と「絶対湿度」に置き換えてイメージしていきましょう。
冷却除湿(冷房)とは「温度」(質量に相当)を下げる、または「絶対湿度」(高さに相当)を下げることを意味します。
これは、ある温度/湿度の空気のエネルギー(位置エネルギーに相当)を低下させる、ことと似ています。
加熱加湿(暖房)とは、「温度」(質量に相当)を上げる、または「絶対湿度」(高さに相当)を上げることを意味します。
これは、ある温度/湿度の空気のエネルギー(位置エネルギーに相当)を上昇させることと似ています。
ある温度/湿度/圧力の空気が持つエネルギーを「エンタルピ」(J)、単位質量(1kg)当たりの空気のエネルギーを「比エンタルピ」(J/kg)と呼びますが、実務上使用されるのは「比エンタルピ」ばかりなので、「比エンタルピ」のことも「エンタルピ」と呼んでいる場合がほとんどです。
余談になりますが、石油やガスもそれ自体がエネルギーを内包しており、燃焼等によって熱エネルギーに「その形態を変えている」のであって、エネルギー不変の法則は成立しているのです。燃焼によってエネルギーが「発生」すると考えるのは誤りとなります。液体の石油や気体の天然ガスの状態の内包するエネルギーも位置エネルギーと似ているとイメージできるでしょう。

 

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