業界雑感 2017年2月

2017/03/09 その他

ジェネリック医薬品の数量シェアが65.1%まで増加してきた(日本ジェネリック製薬協会 平成28 年度第2 四半期(7 月~9 月)速報値)。一昨年政府が2020年よりできるだけ早い時期に80%とするといった目標を掲げた時には、いささか無茶な、と感じたものだが、各年の実績値をみてみると、それなりの数字を残してきているのだから、目標設定による意識付けと、目標に向かって頑張る日本人の生真面目さがなせるわざなのであろう。 

順調に進んでいるように見える後発医薬品の使用促進ではあるが、ここにきて更なるジェネリック医薬品のシェア向上に疑問符をつける声もあちこちで聞かれるようになってきた。シェア目標設定を機に後発薬メーカー大手をはじめとして新工場の建設や増設などの施策を打ち出してきているが、それらの能力増強が寄与していくにはあとしばらくはかかるだろう中、オーソライズドジェネリックの登場や、薬価制度で後発医薬品の薬価がさらに引き下げられるなど、なりふり構わぬ薬剤費の削減策が打ち出されている。

昨年の薬価改定と基礎となった27年9月時点の薬価調査で数量シェアとしては56.2%という数字が出ているが、全医薬品にしめる後発品の数量シェア33.5%に対し後発品のある先発医薬品の数量シェアは26.1%。一方金額シェアは後発品12.4%に対し先発品(長期収載品)は24.9%とあるから、単純計算で後発品価格は先発品の39%ということになる。 薬価としては、後発品は先発品の5~6割(今後は4~5割)なので、医療機関や調剤薬局が先発品を処方するのと同程度の利益(薬価差益)を確保しようとすれば、仕切り価での値引きを大きくしなければならず、その負担はすべて製薬メーカーが負うことになる。

いわゆる低価格競争に陥っているとも思われるジェネリック業界にとって、この低価格競争から脱却し、低価格戦略(コストリーダーシップ戦略)に転換していくことが喫緊の課題ともいえる。メーカーにとって低価格は製造を中心とするコストの低減があって初めて実現できるのであって、低コスト体質でもないのに低価格競争に突っ込んでいくことは自滅行為ともいえる。業界全体がこの自滅行為をつづければその業界は自滅への道をたどるしかないのだから、低価格を戦略として業界全体が生き残っていくためにも、製造コストだけでなく、サプライチェーン全体の低コスト体質を実現するにはどうすべきなのか考えていく必要がある。 

※この記事は「村田兼一コンサルティング株式会社HP」の記事を転載したものです。

執筆者について

村田 兼一

経歴 村田兼一コンサルティング株式会社代表取締役。
1978年藤沢薬品工業(現アステラス製薬)入社。注射剤製造、無菌バリデーション技術開発、FDA対応、基幹システム(SAP)開発等に従事後、生産本部にて中期戦略企画、工場分社化推進・合併準備委員会に携わる。合併後のアステラス製薬では、戦略企画の後、製造委受託の推進を担当する。
2012年に退社し、村田兼一コンサルティング株式会社設立。工場の原価をはじめとする計数マネジメントを中心に、SAP開発を含むサプライチェーン全般の管理・改善を専門とする。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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