基礎からのGVP【第20回】

~自己点検I:自己点検の実施~

はじめに
GVPにおいては、業務の品質管理として監査という言葉ではなく、自己点検という言葉があてられている。それこそ自らが日常業務を点検しながら、安全管理体制の確保に努めなければならない。そして、常に業務手順を見直し、より高い水準の管理体制に改善していくことが求められている。

1.概要

1.1自己点検の意義

自己点検の意義は、第一に日常業務が薬機法等の関連法規を遵守して実施できるように体制および手順等が整備されているか、そしてその手順に従って実施されているかを確認する。第二に未整備な事項はないか、非現実的な手順はないか等の問題点を抽出し、改善を促す。第三に計画に基き改善された結果につき確認することにある。その結果により日常業務の適正さを保証して、業務の結果として作成された資料・情報等の信頼性を高めることとなる。

1.2自己点検の体制

(1)実施者の指定
自己点検は、製造販売業者等のもとに総括製造販売責任者及び安全管理部門を規定し、計画・報告・管理等の手順・担当者を指定し、実施内容を明確に設定しておくことが求められている。そして、自己点検の実施者は、製造販売業者が「あらかじめ指定したもの」と規定されているだけであり、安全管理責任者が自ら(安全管理部門の者を含む)が指定されてもよいし、管理部門外の者(監査関連部門の者)が指定されてもよい。ここが、GCPと異なるところである。
(2)点検の時期
製造販売業者は定期的に自己点検を実施しなければならないと規定されている。したがって、実施者は定期的な自己点検を実施し、その結果を製造販売業者に報告しなければならない。「定期的な」との定義・頻度については明確に求められていないが、手順書等においてその規定を明確にしておくことが必要である。「年に一回は」とか、又は「再審査期間中は安全性定期報告の提出時には」とか、時間的な又はトピック的な決め方もあるので明確に手順書等で規定しておく。また、場合によってはトピック的な時期に実施するのを臨時の点検と規定し、定期的と臨時の点検を組合せ、より的確な点検をすることにより、体制及び資料の信頼性確保に努めることが重要である。
(3)チェックリストの作成
自己点検の方法として、チェックリストを作成し実施することにより的確な判断ができ、且つ効率的な結果を導くことができる。
 1)作成の主な意義
a)点検項目・内容の明確化
点検しなければならない項目が明確となり、漏れがなくなり効率的な実施ができ、予定(計画)も立てやすくなる。
b)点検結果の共有化
業務の実施状況が明確となり、十分な項目、不足がちな項目等々、点検者・被点検者、報告者・受領者と共通の情報として認識できる。
c)改善計画検討の基礎資料
不十分な業務が明確となり、改善しなければならない項目が限定化されることにより、改善計画が立てやすく、到達点がはっきり共有できる。
d)適切な保存記録
自己点検の生データとしてそのまま、自己点検の記録として使用できる。
 2)作成上の主な留意点
チェックリスト作成により様々なメリットがあることが前項で示されたが、以下の留意点を十分認識し作成することが重要である。ある意味において、チェックリストが適切に作成できた段階で、自己点検の目的の半分は達成できたものと考えてよいくらいである。
a)項目の設定根拠の明確化
b)業務手順書との整合性
a、bにおいて、自社では関係のない項目(例えば、新医薬品がないのに市販直後調査の手順があり、その自己点検チェックリストを作成)を規定したり、管理部門で実施すると手順書で規定されている保管業務などを、実施部門でおこなうこととチェックリストになっていたりすると、自己点検の意味がなくなってしまいかねないので、特に注意すること。(ただ書類・手順を整備することが目的となり、実務とかけ離れた内容となってしまうので。)
c)評価可能項目ごとに分類
「情報の収集が適切に実施されている。」か、を確認するのに、情報の種類ごと、入手の段階ごとに「確認できる詳細項目」から積み上げ方式で、全体が確認できるように分類して作りこむこと。(これにより、具体的な問題点等が鮮明になる。)
d)評価ランクの設定
適・非のみでなく、段階を設けてより向上させる意味で、また、僅かの不足で非になったりしないよう留意する必要がある。目的は適・非を明らかにするのではなく、可能な限り改善を繰り返しより信頼性を高めることにある。
e)確認方法の明示
点検にあたり、チェックリストの項目をどの資料を確認したら、調査事項の回答が得られるのかを明確にしておく必要がある。また、点検評価の結果を何に基き出したか(「A資料の情報入手日を確認したところ、2日・・・」となっていたなど)を明確に示すことにより評価結果を認識し合えるので重要である。
f)(要求度合いの明示)
関連法規等で求められている、手順書で最低限求められている、ここまで出来ていたらさらによかった(努力目標的な項目)など、場合によっては要求度や、難易度を示したりすると到達すべきレベルが明確になる。
 3)既存チェックリストの活用
GVPにおいて行政当局等から共通の認識を持つために、チェックリストモデルや、事前確認チェックリスト等が示されている。厚生労働省からはGVPに関する適合性評価について(薬食安発第03003001号、平成17年3月3日)が発出され、評価方法の基準が示されている。また、この通知等に基き、主な都道府県では、チェックリストモデル(東京都)や事前確認のための立入調査要領(大阪府)等がある。各地方庁のホームページ等を参照するとよい。これらのチェックリスト等の項目は遵守状況調査や信頼性調査(再審査申請時の)では、必ず確認される事項なので、自ら作成するチェックリストに含めておかなければならない。
(4)報告、確認体制
1)自己点検結果の報告
自己点検の実施者が安全管理責任者の場合は、自己点検の結果及び講じた措置の結果を製造販売業者及び総括製造販売責任者に文書で報告し、その写しを保存する。自己点検の実施者が安全管理責任者以外の場合は、同様に製造販売業者及び総括製造販売責任者に文書で報告し、その写しを安全管理責任者に提出し、保存してもらう。
2)結果の確認
製造販売業者は、結果の報告について、総括製造販売責任者に内容を確認させ、改善が必要な事項がないかにつき検討させる。その結果、改善すべき事項があると認めたときは、安全管理責任者に文書で指示し、措置を講じさせる。

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