再生医療等製品の品質保証についての雑感【第39回】

細胞加工製品の無菌製造法(1) ~ 最終製品の無菌性保証の考え方

はじめに
 ここ最近、筆者が委員を務める再生医療等委員会や、いくつかの議論の場において、自己由来特定細胞加工物や細胞加工製品における最終製品の無菌試験について議論する機会がありましたが、そこで、「製品(現物)の無菌試験は必要無いですよ」とお話しして、怪訝な顔をされます。そこでさらに、「無菌医薬品も同様に製品の無菌試験は行っていませんよ」とお話しすると、「えー?」というような声を聞くことが度々生じました。あまり常識ではないのでしょうか。そこで今回は、最終製品の無菌保証について雑感を述べさせていただきます。また次回は、今回ご紹介する論文を引用している流れで、2016年に執筆した、特定細胞加工物製造における製品汚染に関する論文の内容でお話しをします。


● そもそも、最終製品の無菌試験ではその製品の無菌性保証はできない
 無菌製品は、細胞加工製品に限らず、無菌医薬品も含め、最終製品(全数)を無菌試験により評価することはできません。これは、最終滅菌法による製品、無菌操作法による製品、いずれも同様です。
 無菌医薬品製造の充てん工程で、引き抜き(20本程度)の無菌試験を実施していますが、これらは製品の全数に対する無菌性保証を目的としているのではありません。図1に、GMPテクニカルアドバイザーの佐々木次雄先生(大阪大学大学院工学研究科 招へい教授)よりいただいた資料を紹介します。無菌化された医薬品が容器に詰められ最終製品となる段階(充てん・閉栓工程)において、偶発的に汚染物質が混入した製品を検出できる可能性は非常に低いです。図の事例では汚染率が1%と高いので検出可能性は18%と比較的高い数値になりますが、実際の汚染率(混入リスク)は1%に満たないと考えるので、少なくとも引き抜き試験は、このように逸脱する製品が、低確率で、偶発的に発生する場合では、検出能力を期待できないことがわかります。実際の20本を引き抜きする無菌試験の目的は、作業(工程)が逸脱せず継続的に運用(無菌操作)できていることを確認することで、無菌試験により製品(同一バッチの全数)の無菌性を直接的に保証することではありません。
 すなわち、無菌医薬品、細胞加工製品など、無菌操作法で製造する製品は、最終製品の無菌性を検出・保証する手段がなく、充てんなどの最終工程の無菌性はプロセスにより担保する方法(プロセスシミュレーション)が必須となります。最終滅菌法が製品の無菌試験を要しないのも、同様に、無菌試験により保証ができないからで、滅菌のプロセスを保証すること(滅菌バリデーション)が要求されます。

図1 引き抜き試験による偶発的な微生物混入の検出可能性(佐々木次雄先生ご発表資料より)

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