非臨床【第27回】実験データの管理の考え方

実験データの管理の考え方

創薬過程で発生する実験データとは、大別して2種類になります。1つは、紙ベースのデータであり、もう1つはコンピュータに保存された電子データになります。もちろん電子データを紙ベースに変換して原本とすることも多いと思います。「試料」のカテゴリーでは、病理標本などもデータになりますが、今回は紙と電子の2種類に限定して実験データの管理を考えてみます。

「薬事法施行規則(申請資料の信頼性の基準)、第43条」に、新薬の承認申請資料の根拠資料は、承認の可否が決定されるまで保存されていることが定められています。つまり、申請資料は根拠を持って保存することが大切です。

本シリーズの第2回に「信頼性保証試験とは」の課題で寄稿しました。そこでは、医薬品の開発においてデータの信頼性を保証することは、新薬の価値を明確にする基準として重要と論じました。データの信頼性は承認申請に求められる必要条件と規定し、『日本流の効率的な非臨床試験の考え方』として信頼性基準を示しました。

振り返って、信頼性基準あるいはGLP基準に従った実験データの管理を考えてみますと、単純に実験から出てきたデータだけではなく、そのデータに科学的な根拠が必要です。得られたデータの正確性、再現性、見読性を科学的に保証するデータ管理体制が求められます。試験データの保証は、試験システムの完成度を高めることが基本です。次に、ポイントを再掲します。

正確性:医薬品開発に求められる正確性には、試験に使用する機器と実験操作の標準操作手順書(SOP)を整備することが大切です。SOPを用いて手順を守った実験により、試験結果の変動が少なくなります。つまり得られた結果は正確であると言えます。
再現性:実験結果に変動があると、それが真実であるか、偶発的であるか、再現性に問題があるか、など複数の原因が考えられます。ただし、試験の取り組み方の問題は予め排除しておくべきです。再現性を保つことは、単純であって難しい課題といえます。
見読性:見読性は「データの見やすさ」といえば単純明快で、そこに科学的根拠を示すことが重要です。研究文書は、予め定められた「文書規定」に沿って作成します。根拠となる生データは、共通フォーマットのシート(実験ノート)を用い、見やすい記載を心がけます。

正確性の中で述べましたSOPは、実験を行いつつ改訂を繰り返していると、それを用いた試験と対比した場合、同じSOPの、どのバージョンかが問題になります。あるいは、SOPのバージョンを議論すること自体も問題かもしれません。SOPは実験行為に「十分に習熟後」に作成することを基本とします。表記も文書規定に沿って体系的に作成します。

非臨床試験では個々の試験方法が細部わたってSOP化されて、研究所の歴史の重みのように管理されて使用されています。しかし分析方法のSOPは個々の薬物で異なります。薬物(未変化体)の分析は安全性試験ではGLP下でTK分析し、臨床試験でもGLPと同等のバリデーションを行って分析し、分析法のSOPが作成されます、一方、代謝物分析は、分析対象の代謝物の同定までに時間がかかり、TK分析に加えるか否かでバリデーションも異なり、必要に応じて分析法のSOPが作成されます。

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