省令改正案検討の経験からみるGMP省令改正のポイント【第9回】

バリデーション及びバリデーション指針、コラムではCPVを解説します。

バリデーション(第13条)
 省令上の大きな改正点は、報告する対象が「品質部門」からQAの表現になっただけと言ってよいでしょう。バリデーションに関して大きな変更があったのは課長通知の方で、従来のバリデーション基準(以下、基準)からバリデーション指針(以下、指針)に改正されたことです。なお、指針への改正は、要求水準の修正は要しないだろうとの厚労科研班の判断から検討対象としておらず、文言の改正は厚労省により検討されました。指針へ改正する前の基準は、2013年の施行通知(薬食監麻発0830第1号)に記載されるもので、既にここで指針の重要な骨格が形作られています。この時はPIC/S加盟のための整備の一環として、主にPIC/S Annex 15に整合するように検討したもので、メジャーな改正点は、継続的工程確認(CPV)を意識して表現を追加した点(後述)、適格性評価からPVまでの流れをグローバルに揃えた点(このタイミングでようやく揃った感)、バリデーションマスタープラン(VMP)が追加された点(ただし、明確な位置付けを表現しきれなかった)、重要工程の例を示した表が基準から削除され事例集に移った点(どこが重要かということは実施者が判断すべきで重要とか重要でないという区別はもはや不要だろうという当時の施行通知改訂班バリデーション基準作成分科会の判断から)、回顧的バリデーションの削除といったところでした。回顧的バリデーションは、簡潔には、国内で初めてバリデーション基準が制定された時に、それ以前の既許可品目で実施する予測バリデーションの補足的位置付けであったため、既にその存在意義を失ったという経緯があります。作業的には製品品質の照査がこれにとって代わった感じでしょう。Q7 Q&A(Q12.4)には回顧的バリデーションは依然として許容されるかの質問があり、同様にQ7発出以前の品目に対して例外的に許容されるとしています(その他Q&A参照)。
 2013年の基準の以上の改正点は指針には保持されており、これより詳細に触れます。
名称を「基準」から「指針」にしたことは、いわゆるグローバルのガイドラインとの整合と思われますが、その変更に対しては大きな考慮点はありません。バリデーションの目的は従前と変わっておらず、指針では「期待される効果を与えることを検証し、これを文書化すること(省令第2条)」となっています。
 従前よりバリデーション手順を作成することが省令で規定されていたことはご承知のとおりですが、改正によってバリデーション手順とVMPの関連がより明確にされました。基準では、「大規模プロジェクトのように…個別の計画書が複数ある場合には、バリデーション全体を総括したマスタープランの活用について考慮すること」とあり、これはAnnex 15の1.6章でいう大規模で複雑なプロジェクトの場合に有用とされる別立てしたバリデーションプラン(separate validation plans)に相当し、1.4章~1.5章でいうVMPはバリデーションに関する手順がそれに該当していました。指針では課長通知で求めるバリデーションに関する全体的な方針などをバリデーションに関する手順に定めるようになっていて、この通知ではそれをVMPというとしたことから、Annex 15のVMPはバリデーションに関する手順と同等であることが明確になりました。加えて、バリデーション計画書中に触れている「関連する複数のバリデーションを体系的かつ円滑に行うことを目的として、全体を総括するプロジェクトをあらかじめ文書とする」ものがAnnex 15の1.6章で述べるバリデーションプランに相当します。また、基準では製品ライフサイクルの構成要素を表現するために医薬品開発、日常的な工程確認及び製品品質の照査等が書かれていましたが、バリデーションライフサイクルと製品ライフサイクルの用語が交錯していたことから、指針では工程デザイン及び日常的な工程確認が書かれていてバリデーションライフサイクルアプローチの考えを示唆するとともにQRM及び製品品質の照査を加え、それらの活動から得られる知識(本文では知見)を活用するよう求めた形になっています。
 バリデーションにより検証する事項、すなわち、実施対象は基準で設備・製造工程・洗浄作業となっていたものが、指針では設備・製造用水・製造工程・洗浄作業とカバーする範囲は変わらないものの若干詳細な説明となっています。製造工程では保管を含むとあるので、留意が必要です。大きな変更点は、試験検査の方法(装置又はシステムを含む)が追加されたことでしょう。これまで試験検査の方法のバリデーション(分析法バリデーション)は、ICH Q2の考え方に準じて医薬品開発で行うことから審査マターであり、事例集で自主的に設定するものについては分析法バリデーションを推奨する形になっていました。指針で分析法バリデーションが実施対象となったことから調査対象にもなったといえます。この位置付けを確認したところでは、開発部門からQCに試験方法が十分に移転されているかを確認する目的で設定したということでした。したがって、指針に示す分析法バリデーションは、例えば承認書に規定される試験では、移転時の分析法バリデーションの計画書及び報告書が確認の対象になります。なお、自主的に設定される試験方法については、従前どおりとなります。ここで求める分析法バリデーションの詳細は公式には具体的に示されていないので、申請者や製造所が自ら適切な手段を講じる必要がありますが、上記の目的である移転が十分に行われているかという観点からは、Q2に準じて、特に試験室間差を検証することがポイントになると筆者は考えます。古い既承認品目で十分な資料がない場合は、指針に準じた検証がいずれ求められる可能性があると推察されます。
 

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