医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第24回】

2022/02/25 品質システム

佐野 旭

試験室に於けるCMR物質のオペレーションと曝露リスク。

「甘く見るな!試験室に於けるCMR物質のオペレーションと曝露リスク」

1、  製薬企業のあるべき姿

CMRとは発癌性、変異原性、生殖毒性のある物質。 

重要課題:取扱い、保管及び廃棄に留意が必要。


製薬企業の国際化が進む中、企業の多様化を配慮した製薬工場の各種取り組みが求められるようになってきました。製薬企業、特に工場や試験室は大変厳しいGMPの法律を守り、患者様の医薬品使用に対する安全品質を担保せねばなりません。同様にHSEの運用についてはリスクベースの継続管理ですべてのリスクは許容できるレベルに低減して運用することが従業員の皆さんの健康と安全を守るために必須となります。そのためにはHSEで求められているのは製薬会社で働くすべての人々の健康被害の予防です。これはGMPだけでは達成できない課題です。

GMP患者様の安全   HSE: 従業員の健康安全を守る

医薬品製造を大なり小なりを行う会社にとっての社会的責任・使命は医薬品の安定供給と製品の品質確保ですが、そのための原薬や試薬のオペレーションをを行うメーカー従業員の健康安全環境が守られていて初めて社会的責任や会社の使命が達成できるのです。工場の試験課で行われている薬理分析などの業務に使用される原薬や試薬には従業員の方々の健康被害リスクが多く存在しています。今回は特にその中でCMR物質の保管管理、オペレーションの重要性をクローズアップしてみたいと思います。試験室は少量ではあっても数多くのCMR物質が使用されていることがあります。CMR物質管理は、先ずはMSDS情報等によりその毒性のOELにより封じ込めが必要になります。つまり、封じ込めに必要な建物構造の床壁天井をリークの無い気密性を確保した上で専用空調、特に吸排気にHEPAフィルター99.95%濾過効率以上で排気は循環せずAll排気する。人・物の出入り口は前室をエアーロックし、外の試験室とCMR室間を差圧7~10Paで出入りの際のCMR物質リークをブロックする必要があります。ソフト面はRPEやPPEの程度を曝露定性評価、定量評価結果N4のデーターで判定をしてOEL以下であることが前提で、出来る限りOELの値を極限値迄確認することが重要です。それはCMRではOEL値以下の定量評価分析結果でも健康への影響リスクが存在するからです。事例としては妊婦さんが奇形児を出産するリスクが残るからです。そのような健康被害リスクを残さず仕事が出来る環境を作ることが企業としての社会的責任であり、責任を取るのは関係者特に工場長さんということになります。

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執筆者について

佐野 旭

経歴

外資系医薬品会社に入社後、建設プロジェクトや設備保全などを担当し、また関連会社においては、医薬品の検査・包装にも携わりました。その後は工場のHSE Managerとして工場長と共にHSE Global Standardの社内への浸透をさせるべく事業所内教育に力を注ぐ傍ら、たびたび海外の事業所へAuditに出かけてHSE Global Standardの重要性を身をもって学びました。
M&Aが始まり7回の会社統合を経験し、そのたびに工場閉鎖が発生し、その環境影響評価と土壌汚染対策を担当しました。
又、会社統合のたびにGlobal Standardが変わり、Global Standardの体質まで学ぶことになりました。
2006年に退職後、コンサルタント会社を設立し、今までの経験を生かしてHSEのアドバイザーとして、企業のHSE導入サポート、企業内教育、HSE Audit、社内教育、講演、講習会、建設プロジェクトサポートなどの仕事をさせて頂いて多くの企業様、学校、行政関係様にお世話になり、現在に至っております。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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