ゼロベースからの化粧品の品質管理【第17回】

化粧品GMP手順書の作り方 ④(原料)・材料の管理

 前回は、④原料・材料の管理として原料について採用から生産までの一連のプロセスで留意すべき事項についてお話しました。
 原料に関しては、配合禁止物質や配合量制限の管理等、原料の配合情報の管理だけに止まりがちですが、原料の製造工程や反応性を含む総合的な管理が必要です。例えば、原料の配合時の組合せについてはカルボマーと塩を含む抽出液の配合の際の粘度挙動、更に、不純物については製造工程由来の物質として界面活性剤におけるメタノールの含有等があります。原料に関する管理事項は実に奥が深く、自社の情報収集だけでは限界がありますので、他社の配合実績の調査は必須です。現在、グローバル調達が加速していますが、化学名が同じだからと言って安易に海外調達品に切り替えることはリスクが高いと考えます。国内で使用実績のない取引先の原料は、安全性を中心とする十分な調査(品質、コスト、納期)が必要です。原料に関する事項はこれ位にして、今回は前回の原料以上に品質のロット変動が大きく、品質事故が起き易く管理が難しい材料(資材)について考えて見たいと思います。

1,化粧品における材料の位置付け
 化粧品で材料として扱われる対象は、中味を提供するための容器類、商品を保護するための個箱、外箱、輸送梱箱、更に、製品情報を提供するための能書等があります。
 材料として求められる機能は、包装機能ですので、規定されている化粧品の品質規格が有効期限まで保証できることが求められています。3年間以上品質が保証できると各社が判断されているならば、有効期限表示をしなくても法的には問題ありません。但し、保証すべき品質規格の解釈が薬剤にみに止まっている会社がありますが、コンセプト成分を含む化粧品の品質規格であることの認識が必要です。
 従って、製品の開発段階においては、各社の販売チャネルやお客さまが使用される環境を踏まえて包装材としての適格性の評価基準が明確なっていなければなりません。つまり、対象となる製品の使用環境が異なれば保証試験の項目も異なるのではないでしょうか?或いは、コスト高や使える材料の範囲が狭くなりますが、一番厳しい過酷条件で保証するとことになります。例えば、ハンドソープで暫くお客さまが使わない状態で放置された時に使えなくなってしまう商品が市場には有ります。その場合には、使用途中で暫く使わない状況は例外として扱うのか、注意書きで対応するのか、使えないことが無いように中味や材料の仕様で工夫して対応するのか、これらは企業の技術力、製造原価等とも関係が深いため難しい課題ですが、作り手の視線だけで止めることは避けるべきと考えます。
 また、化粧品では、使用する際に便利であること、魅力があることが求められます。医薬品では少し前まではクリーム類は軟膏瓶か、アルミチューブの2種類しかなかった印象があります。それに対して、化粧品では高級感を出すために加飾したガラスジャー容器にしたり、持ち運びの対応からチューブ仕様にしたり、同じ中味でも材料仕様は色々な視点から仕様を決定していきます。
 ここで、化粧品が誤解される事として、“化粧品は高い容器を使っているから高額で売れる”と間違った認識や、ストック容器と呼ばれる規格容器を使いシュリンクフィルムで加飾するだけで材料の仕様検討はあまり重要でないと考えている方がいますが、中味との相互作用で商品の価値を生み出すこと、美容法に基づき適正な使用が出来ることが容器には求められていることの認識が必要です。

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