室内除染技術の動向について-過酸化水素除染の技術-

2013/02/25 施設・設備・エンジニアリング

1.国内の動向
 厚生労働省は2012年の3月9日にPIC/S(The Pharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Scheme:医薬品査察協定及び医薬品査察協同スキーム)事務局に加盟申請書類を提出し、日本がPIC/S加盟に向け本格的に始動した。
 
 PIC/Sは、欧州各国で異なる医薬品の製造,品質管理の共通基準に基づく査察を各国間で協調して実施することで加盟国間の同質的な同等レベルの査察に対する整合性を計り、各国間での相互査察を円滑に行えるようにすることを目的として作られた協同体である。
 
 この世界規模の動きが、相互に海外輸出される医薬品の品質の向上と平準化につながり、各国間での査察官派遣などの作業の排除と査察の円滑化および期間短縮が図られ、良質の医薬品が患者に迅速に提供できることにも寄与する。優れた医薬品をタイムリーに必要とする我々にとって有益な協同体である。
 
 日本がPIC/Sに加盟すると、既に欧州の多国間で用いられているPIC/S-GMPを基準に医薬品の製造・品質管理基準と整合性を図ることになる。米国のFDAも既に2011年に加盟を果たし、既に欧州と米国ではPIC/S GMPでの調和が進められてきている。
 
 国内でも、薬局方16改正や無菌医薬品製造に関する指針改定などにより、既に基準の整合性を図ることが進められてきている。
 
 今後、加盟が正式に決まれば、PIC/S-GMPに沿った品質保証体系が、各製薬企業に求められていくことになる。
 
 従来、数十年間ホルムアルデヒド(ホルマリン)を室内除染に使用し続けてきたが、WHO(世界保健機構)等でホルムアルデヒドが人に対して発癌性があるとして以降、世界的によほどの理由がない限り、一般的には医薬品の製造環境の除染に使用することが困難になってきた。
 
 日本国内でも、2008年3月施行の特化則の改正により、ホルムアルデヒドガスを使用して室内を除染することが、非常に困難となってきた。図1に従来と改正後の排気時間の相関を示す。
図1
 
 既に欧米への輸出向け無菌製剤を生産する工場では、除染作業にホルムアルデヒドを使用することは難しい状況となっている。しかし、規制範囲内で国内向けにはまだ使用ができること、対象物質及び環境(室内・地球環境とも)に関する残留・腐食問題、また安定した室内除染の確立といった面で、いまだホルムアルデヒドに代わる代替薬品が未だ明確になっていないこと、代替には投資が必要なこと等、様々な理由のため、未だ除染作業にホルムアルデヒドを用いている生産工場も多いのが現状である。
 
 しかし、PIC/S加盟が正式に決まれば、欧米のGMPに準じた生産体制、品質保証体系が求められるため、欧米では既に使用されなくなっているホルムアルデヒドを用いて除染作業は国内でも使用されなくなり、この1~2年の間に、さらに脱ホルムアルデヒドが加速していくことが容易に予想される。
 

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