Auditor(品質監査者)はスーパーマンか?

2016/09/02 品質システム

高橋 治

私が製造委託先への品質監査を初めて経験したのは、今から15年ほど前のことです。当時の私は品質保証部門に異動してから日も浅く、同行した自社工場の技術者に実務の大半を担ってもらう「名ばかり監査者」でした。見よう見まねでスタートしてから、多くの失敗も重ね、延べ100件近くの監査を実施してきましたが、品質監査は、数ある品質関連業務の中でも極めて特殊な業務だと感じています。
 
<GMPの理解>
まず、品質監査の規制上の扱いを確認してみましょう。例えば、日本のGQP省令の第10条には、こんなことが書かれています。
 

当該製造業者等における製造管理及び品質管理が、法第十四条第二項第四号及び第十八条第二項の規定に基づき厚生労働省令で定める基準及び事項並びに第七条に規定する取決めに基づき適正かつ円滑に実施されていることを定期的に確認し、その結果に関する記録を作成すること。

 
法令の表現は難解ですが、要は、「GMP省令に基づき、製造所のGMPが適正かどうか確認しなさい」ということです。適正かどうかは、ICHの品質ガイドラインやPIC/S GMPガイドにも照らして判断することになるので、監査者は、これらのガイドラインに示されたGMP要件を知っている必要があります。ところが、ガイドラインの条文の多くは一般論・抽象論で、実際の事例を経験しないと、なかなか本質の理解に辿り着けないかもしれません。監査先で見聞きすることも「事例の宝庫」なのですが、鶏が先か卵が先か・・・・・
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執筆者について

高橋 治

経歴

株式会社シーエムプラス GMP Platform シニアコンサルタント

1987年日本鉱業(現 ENEOS)入社、治験薬GMP体制の立ち上げ、化学合成原薬の製法開発等に従事。2002年以降、住友製薬(現住友ファーマ)、持田製薬、ノバルティスファーマで品質保証部門に勤務、品質監査を含むGQP業務を担当。2013年9月にシーエムプラス入社、2014年4月に欧州化学工業連盟原薬委員会の監査員認定を取得、現在に至る。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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