バイオ医薬品とベンチャー【第3回】

2013/01/21 製剤

1.医薬品研究の過酷さ
 
 前回の記事にて、医薬品研究が、以前に比べて候補物質を見つけることの困難さと開発費用の増大によって難しくなってきていると説明しました。
 
 候補物質を見つけることの困難さの理由として
 
 1.多くの分野ですでに医薬品が既に存在すること
 2.既医薬品より有効性が及び安全性を高めることが難しくなってきたこと
 3.医薬品の存在しない分野は、その原因が未知であったり医薬品の開発が困難であった
   り、遺伝病のように投与方法技術開発が困難であったりという障害があること
 4.世界中で患者の医薬品への費用負担の問題が大きくなっていること
 5.効果に大きな差がない場合は、ジェネリックなどの安価な医薬品への移行が進んでい
   ること
 
 などがあげられると思います。
 
 開発費用の増大は、この困難さから派生している原因によるところが大きいのですが、それだけではなく医薬品開発現場においてより高度な実験機器などが要求され統合的な技術力の差が医薬品開発のスピードに影響が出てきている状況があります。
 
 このような中でベンチャーが創薬競争に挑むためには、既存の医薬品開発と異なる戦略が必要です。つまり、低分子化合物の大量のライブラリーを用いて薬効物質を探索し、その基本構造を用いて、有効性や安全性が高い新規化合物を合成するといった開発競争に勝利することは、難しい状況となってきています。そこで、バイオ医薬品の開発を行うベンチャーが多くなっていると考えています。

 
2.バイオ医薬品の開発の可能性
 
 生体内物質の新規の機能の発見は、偶然や長年の地道な研究により大学で行われるケースが多々あります。そこで、生体内物質そのものを利用した治療、抗体を用いて生体内物質をブロックすることによる依る治療、あるいは生体内物質の遺伝子発現をブロックしてしまう治療などは、現在の生化学技術を用いて比較的安価に短期間にその可能性の研究を行うことができます。
 
 多くの創薬系バイオベンチャーはこの線上に存在します。タンパク治療・抗体治療・遺伝子治療などのバイオ医薬品を掲げている理由です。当初のこれらの治療の有効性が証明されると、その後ペプチドなどの低分子化が行われ、有効性や安全性の高い低分子化合物などが将来的に開発されていくと思われます。
 
 バイオベンチャーは、発見された新規機能物質に対応する治療方法を短期間に対応するためにバイオ医薬品に傾倒しているともいえると思います。

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執筆者について

渡部 博次

経歴 10年強、製薬会社にて細胞工学(バイオプロダクツ製造研究)を行った後、商社などを経てバイオベンチャー経営に携わる。基礎研究から臨床、ライセンス、財務、法務、営業にわたり企画開発を行うことによって、経営を再構築させることを得意とする。現在、大学にて「実社会に役にたつ経営学手法」をテーマに教鞭を行う。 ※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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