私が経験したあれやこれやの医薬品業界【第5回】

2021/08/27 その他

鴫原 毅

第一三共という新会社のオペレーションが開始。Ranbaxyの買収編。

第一三共最初の3年/Ranbaxy買収

2007年から第一三共という新会社のオペレーションが始まりました。私の部署はアジア、中南米など、いわゆるRest of the world(日本と欧米以外はこのように呼ばれた、失礼な時代でした)の事業、およびライセンスアウトした品目の収入管理、ライセンシーとの折衝などを行う、インターナショナル営業部という変わった名前の部署でした。3年間、その部門長を拝命しましたが、市場伸長率の高い新興国での事業、特に旧第一製薬の海外事業のスコープにはなかったインド、中南米での自社開発、自社販売事業を推進する立場になったことは自身のキャリアにおいても幸運と感じました。しかし、Ranbaxyの買収によってその事業は大幅な変更が生じました。

Ranbaxy買収はこの3年の間の最も大きな出来事でした。新薬事業とジェネリック事業を融合させるという、日本の製薬企業としては挑戦的な事業でした。私自身は、医薬品企業は新薬市場もジェネリック市場もカバーすべき(特にジェネリック市場が大きい新興国市場では)という考えだったので、ジェネリック市場参入は賛成でしたが、新興国の新薬事業をRanbaxyに任せるという選択には賛成できませんでした。それは、やはり新薬事業とジェネリック事業は事業展開において、いわゆるマインドセットが違うのではないかと強く感じていたからでした。有用な新薬を開発してそれを普及させていく新薬事業は何十年という、その市場(患者、医療従事者、保険支払者)に対する長期的なコミットメントが必要です。一方、ジェネリック事業は複数の企業が特許が満了した医薬品を製造/販売し、コストで医療に貢献するという事業です。新薬事業とは依って立つところが異なります。ジェネリック薬の製造はジェネリック企業間で委受託製造を行い、激しいコスト競争の中、利益が見込めなくなった品目あるいは市場からは撤退という選択肢を取らざるを得ないビジネスです。Ranbaxyや他のグローバルジェネリック企業の事業を見ていると、安定供給や市場コミットメントが難しいビジネスだと感じました。
 

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執筆者について

鴫原 毅

経歴 1978年に第一製薬(現 第一三共)入社以来、約30年に亘り、米国および中国駐在、ファインケミカル子会社での海外販売も含め、主に海外事業を担当。
2007年に統合した第一三共ではアジアおよび中南米地域事業および欧米導出品目の収入責任者、その後、第一三共中国の董事長、総経理を務めるなど、医薬品国際事業に幅広い経験を持つ。
2012~2018年は、日本製薬工業協会国際部長として、主に欧米地域およびグローバルヘルスに関する国際的な業界課題対応を担当。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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