医薬品設備建設における「オーナーのプロジェクトマネジメント2nd改訂版」【第2回】
2021/05/28
施設・設備・エンジニアリング

3. 何をマネジメントするか
一般にプロジェクトマネジメントの重要な要素は、コスト、スケジュール、パフォーマンス、クオリティとも言われている。或いは、スコープ、スケジュール、コスト、クオリティ、組織、コミュニケーション、リスク、調達、ステークホルダーを主要な項目とするPMBOK®の考え方もある。いずれも間違いではないが、これらの項目だけではプロジェクトをマネジメントするのに十分とは言えない。例えば、現場における工事や試運転における安全に問題があれば、工期にも大きく影響し、結果的にはコストやスケジュールといった項目に現われてくることになる。そういった意味では、上記の重要要素のコスト、スケジュール、パフォーマンス、クオリティが計画通りであれば、プロジェクトは成功したと考えてもよいだろう。製薬企業にとってクオリティといえば、医薬品の品質を描くであろう。プロジェクトマネジメントにおいては、プロジェクト自身の品質にも重点を置くべきであるが、プロジェクトの品質が悪ければ、性能、機能といったパフォーマンスに影響する。
逆に考えると、「プロジェクトを失敗させないために、何をマネジメントするべきか」ということを考えればよいことになる。もちろん、失敗という言葉の定義には論議があるが、概ね、以下のことをプロジェクトにおける失敗と考えてもよいと思う。
プロジェクトの失敗とは
① プロジェクトのコストが計画を超過した
② プロジェクトのスケジュールが計画より遅延した
③ プロジェクトのパフォーマンス(性能、機能、プロジェクト品質など)
が計画を達成できなかった
④ 医薬品品質を確保できない要素があった(風呂ジェクト終了時点では
医薬品の製造は始まっていない)
① プロジェクトのコストが計画を超過した
② プロジェクトのスケジュールが計画より遅延した
③ プロジェクトのパフォーマンス(性能、機能、プロジェクト品質など)
が計画を達成できなかった
④ 医薬品品質を確保できない要素があった(風呂ジェクト終了時点では
医薬品の製造は始まっていない)
ここでは、超過とか、達成できなかったという定性的な表現にしているが、具体的には定量的な表現が望ましい。例えば、「コストが予算の10%以上の超過があった場合に失敗した」といったように定量的に考える。定性的、定量的のいずれにしても、プロジェクトが失敗しないために、何をマネジメントするかということになる。コストやスケジュールに何か兆候が見え始めた段階では、プロジェクトマネジメントとしては遅いタイミングであり、Feedbackマネジメントだけではなく、Feedforwardマネジメントが重要となる。
わかりやすく言えば、計画では2月1日に発注するABC機器は予算が5千万円だったとしよう。発注に間に合うタイミングで見積を入手し、価格交渉をしても7千万円が限度であったとする。2千万円の予算オーバーは、このプロジェクトでは致命的であり、ゼロから仕様の再見直しを行い、その結果、工期影響も3か月の遅延となった。ここでのマネジメントはスケジュールだけを意識したものであったために問題が発生したが、本来は2月1日に予算内で目的の機能を持つABC機器を発注することが、マネジメントの目標である。このABC機器が、プロジェクトにおけるコスト、スケジュールあるいは機能に大きな影響を与えるとすれば、事前の調査(計画段階でもよい)をしておき、この仕様なら予算内に入りそうだとか、納期の確認等をしておくことが、プロジェクトをスムーズに進めるためには重要となる。
また、コストやスケジュール以外で、より早く把握できるもの、特に定量的に把握できるものがあれば、できるだけ多くの項目をマネジメントしておくべきである。個別には、各ステージでの詳細で触れていくことにする。
4. プロジェクト計画に関連する主要な問題点
プロジェクトの計画が、後のステージのプロジェクト全体に大きな影響を与える。そこでの主要な問題点について触れる。
(1) プロジェクト計画が杜撰であるために、計画通りにプロジェクトが進捗しない
まずプロジェクト計画そのものが、実行できないような内容、あるいは実行が非常に困難な内容になっている場合がかなりある。元々の計画が、プロジェクトの目的/目標に合致しないような計画であったり、計画そのものが目標の機能や性能を満足できるものでなかったり、実際には製作や施工のできない内容であったりするためである。特に、計画時に参画したメンバーが、実際の医薬品設備やGMP等を熟知していないためにこういったケースが発生することがよくある。
当初の計画は理路整然とした計画内容であったにもかかわらず、計画段階のある時点で強制的にコストカットが行われて、そのコストカットに伴った計画の見直しをしていない。即ち、コストカット後に杜撰な計画となったために、問題が発生することも多々ある。
また、工期に関しても同様なことが言える。プロジェクトの各要素には、同時並行で行えないもの、ある事象が終了して初めて行えるものといった、種々の制約がある。これを無視したスケジューリングを行うと、見事に工期遅延という羽目になってしまう。
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