医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第63回】

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「日本製薬企業に求められる生産ラインの静電気対策技術」
1.製薬企業のあるべき姿
製薬企業の国際化が進む中、企業の多様化を配慮した製薬工場の各種取り組みが求められるようになってきました。日本国内製薬工場がその技術レベルで明らかに足りていないのは電気専門技術者の不足です。製薬企業はGMPに適合する医薬品の生産技術でラインのトラブルや人的エラーで生産ラインを停止せねばならないような課題を100%克服し、安定した医薬品の製造そして供給が図られることが重要な本業の「攻めのCSR課題」です。近年の医薬品生産プロセスで使用される各工程の機械は複雑な電気回路や電気機構などにより構成され重要な役割を果たしています。これをオペレーションしてゆく事は電気技術レベルの高い電気技術者を抱えている事が求められています。なぜなら、近年の医薬品生産工程にはPTPシートで代表されるプラスチック系包装資材や静電気の発生リスクの高い高活性原薬の粉末を配管内移動やホッパーなど静電気の発生を容易にする工程が多く存在する事でその除去技術が必要となっています。GMPでは塵埃や菌類が静電気であろうがなかろうが原因は何であれ、製品に混入することを許容していません。欧米でも古くから課題として解くんで来ているのが静電気除去対策そして静電気リスクマネジメントです。これらは電気の技術者の内、静電気に対する研究者レベルの高い技術を持った電気技術者が研究的に取り組んで少しずつ改善されて来ているのが現状です。静電気のリスクは広く、GMPの塵埃などの混入課題のみではありません。火災・爆発・感電・機械の誤動作による不良品の発生など出来ないと困っていることで済ませられる問題ではなく、解決せねばならない課題となっています。以下に静電気課題の事例をいくつかご紹介しておきたいと思います。
<ベルトコンベアー>
接地された櫛状金属や光沢のある金属棒を使用しているが、材料がコンベアーの端からホッパーやシューターに流れ出したときに静電気が発生します。これらが問題を引き起こす電荷を持つ場合はベルト支持具と端部プーリーをホッパー又はシューターに接続せねばなりません。

(NFPA: National Fire Protection Association)
<混合工程とブレンド工程>
容器の液面上に可燃性の混合物が存在する可能性が有る場合は不活性ガスのブランケットを使用する。
<廃棄物の再生工程>
導電性の溶剤が使用可能なら使用すること又は追加する。
<溶媒抽出プラント>
プロセス内の全てのタンク、容器、モーター、パイプ、導管及び建物フレーム等を一体化する。
<引火性液体を取り扱うプラント>
スチームクリーニングが危険な場合はスチームパイプやノズルを蒸気をあてる対象にする。
<引火性液体を輸送する全てのスプレーブース、排気ダクト、溶剤タンク、配管>
エアーレススプレーシステムの場合やスプレーされる対象が導電性の場合エアーレス機器を対象に接続する。
<静電気ハンドスプレー機器のスプレーガン>
スプレーガンのハンドルはオペレーターの静電気の蓄積を防ぐ為に接地する必要がある。
<プラスチック容器及びプラスチックライニング容器>
可燃性の雰囲気でプラスチック容器を使用する場合は近くの導電物に接地する。
さて、上記の課題に対して各種対策の方法について事例を以下に列記しておきます。
<ボンディングと接地>
- 静電気の蓄積を防ぐ最も安価な方法
- 結合線が機械的強固であることを確認する必要がある。
- 静電気が関与する電流は小さいため、大きな電流容量は必要ありません。
- 絶縁されていない結合及び接地導線が良い。
- その設置状態は目視検査で容易に確認出来る。
- 接地接続の抵抗は106オームを超えてはいけない。
- 照明回路、電力回路又はアレスター(避雷針)用接地電極は静的接地目的には充分です。
- スプリンクラーシステム、電気配管システムや建物の鉄骨に接続するなど他の接地方法も受け入れできます。
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