ISO 14644-1(クリーンルームの清浄度評価)の改訂

2016/03/10 施設・設備・エンジニアリング

ISO 14644-1とは「クリーンルームの清浄度のクラス分けのルール」である。2015年に実施された改訂は実に16年ぶりであり、近年の科学の発展を考慮すると余りに時間がかかったと言わざるを得ないだろう。これまで様々な議論が行われてきたが、ここでは出来だけ簡潔に改訂のポイントを説明する。
 
最も注目すべきは、清浄度クラス分け法の改訂である。改訂前は、粒子数濃度・粒径からなる式によりクラスが決定されていた。それが、具体的な濃度・粒径からなる表(Table 1 - ISO Classes of air cleanliness by particle concentration)を参考にして区分けする様に改訂された。
しかしながら、区分の変更がある訳ではない。統計学的、及び/または合理的に不自然な区分がクラス分けの式の対象外になったということだ。対象濃度が濃すぎる、薄すぎる、粒径が大きすぎる等がそれに相当する。(表の数字自体は以前の式を参考にして出している。)また、表に無い任意の中間粒径については以前の式を使用する。
 
最小測定点数決定法の変化も簡易に述べる。改訂前は床面積の平方根を基準にしていたが、根拠が明確でないことから変更が求められていた。結果、この基準はなくなり、ISOが決定した表を参考にすることになった。しかし、この表の数字の科学的論拠も完全なものではなく、賛否が分かれている。
 
清浄度の判定については、モデルがよりシンプルになったと考えれば良いだろう。平均粒子数濃度と標準偏差から統計学的に判断する方法から、それぞれの場所全てにおいて目標濃度が満たされるかどうかという判断基準(Yes or No)になった。
 
全体として以下の点がポイントであると考える。
・根拠があいまいなものが一部明確にされ、より合理的な基準となった。
 特に清浄度において、「クラス分け出来る範囲」が絞られたことは重要である。
・各点数決定評価法を簡便にした上で、測定作業自体の大きな変更は避けた。
 また医薬品の製造自体に大きな影響はないと言える。
・科学的合理性を完璧に得ることが出来た訳ではない。
 
これは16年が費やされ、長い間、検討・議論された結果の改訂である。そのため、すぐに大きな変更があるとは考えづらい。簡潔に説明することを目的としたため、統計学的な議論、改訂の詳細なバックグラウンド等はここでは省かせていただいた。ただし、広い分野に影響を与えることは間違いないため、今後も現場からの反応を中心に注目すべきである。また、原文をぜひ参照いただきたい。
 

執筆者について

冨樫 将高

経歴

2007年生命理工学部、修士課程卒業、2010年薬学系研究科、博士課程を卒業、同年大塚製薬株式会社に入社。診断事業部研究部にて、結核の体外診断薬開発に従事。2012年株式会社シーエムプラスに入社。
国内外のGMP・生化学に関する情報収集、主に専門的分野の翻訳、社内での教育等を担当する。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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