実践! 医薬品開発のプロジェクトマネジメント【第10回】

 今回は、日常のプロジェクト活動である「仕事の段取り」について考えてみたい。プロジェクトの効率を上げる様々な段取りのうち、情報収集から意思決定までのコンセンサス構築や戦略的提案を行う際に必要な「ソーシャルスタイル」、「情報収集と根回し」、「コミュニケーション力」を中心に、今回および次回、取り上げる。これらの成否はプロジェクトの成功確率に大きな影響を及ぼす。

 プロジェクト活動においてはいわゆる「社会人基礎力」が必要である。すなわち、「前に踏み出す力(action)」、「考え抜く力(thinking)」、さらに、「チームで働く力(teamwork)」に不可欠な「コミュニケーション力」が重要である。企業においては、一人ではなかなか思うように仕事は進まず、チームとして初めて力を発揮するのであり、そこでは「コミュニケーション力」が物を言う。さらにこのテクニックを学び実践すれば、各部門との深い繋がりができ、多様な年代や各専門のメンバーと連携することができ、各種会議や交渉などあらゆる場面で活かすことができる。この「コミュニケーション」を円滑に進めるまず一歩として、「ソーシャルスタイル」を知ることである。自身のスタイルを知り、相手のスタイルを知る(想像する)ことにより、たとえば表現を相手に伝わりやすい言葉に変えてみるなどして、結果的に人間関係が良くなるものである。

 「ソーシャルスタイル」とは、他者から観察できるような、人が習慣的にとる行動の傾向のことをいう。もともと1960年代にDavid Merrillによって構築された行動科学の理論である。長年の研究の結果、行動傾向には「事実:思考表現度(自己主張度)」と「感覚:感情表現度」の2つの尺度があり、その組み合わせにより、4つのスタイル(driver/行動派、analytical/思考派、expressive/感覚派、amiable/協調派)があることが分かっている。現在、様々な「ソーシャルスタイル」を求める手法が使われているが基本的な考え方はいずれも同様である。国際的に使われている代表的なものにDiSCがある。筆者は日本語と英語の両方のDiSCテストを何回か受けたことがあるが、時期や言語を問わずいずれもほぼ同様の結果であった。なお、各スタイルは、どれが良い悪いというものではなく、全く優劣はない。自分と相手のソーシャルスタイルを知ることによって、自分と相手とでは価値判断の基準(勝負・因果・好嫌・善悪)が異なる可能性があることが分かる。相手に伝わる言葉を知って使い分けることによって、「コミュニケーション」がうまく取れる可能性が高まる。

 「ソーシャルスタイル」のうち、今回、最も簡便な方法でスタイルを調べてみよう(図1)。あなたは、行動や判断をする際にどちらを重視していますか。「てきぱき」と処理をしますか、それとも「「じっくり」考えてから処理しますか。それから、「りくつ」を重視しますか、それとも「きもち」を重視しますか。さて、あなたはA B C D、どのスタイルですか。そして、相手はどのスタイルですか。
 

図1 どのスタイルですか?
 

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