実践! 医薬品開発のプロジェクトマネジメント【第2回】
医薬品開発は、多くの場合、10年間と長期間で、2,000億円もの多額の費用が掛かるが、成功確率が3万分の1と極めて低い、などという特徴があることを前回述べた。今回は、時間及びカネを効率的に用い、成功確率を少しでも高めるイノベーション施策である「ライフサイクルマネジメント」について述べることにする。医薬品の「ライフサイクルマネジメント」は、候補品の探索段階からその役割を終えて販売中止に至るまでを「プロジェクトマネジメント(PM)」体制を確立して管理することである。このうち重要な要素である「戦略マーケティング」を取り上げ、「ステークホルダーとの連携」および「特許戦略」についても触れる。
● 戦略マーケティング
医薬品開発において、製品価値最大化を図るためには、研究段階から販売中止に至るまでマーケティングの考え方を取り入れることが重要である。すなわち、早い時期からアカデミアや患者団体との接触や巻き込みを行い、さらには、通常はPhase II段階で起こるPOC(Proof of Concept)前後での視点の切り替えが重要である。すなわち、サイエンスおよびテクノロジーを駆使してスピードを最優先とする視点から、全面的な開発を目指すビジネスの視点へ切り替えるのである。これらによって、資源投資の効率化を図り、結果的には製品力を高め、製品寿命を延長することも可能となる。
ところで、「マーケティング」と名付けられた部署は、1980年代まで、とくに内資系製薬企業には少なく、名称は問わずマーケティング機能を発揮している部署はほとんどなかった。ちなみに、「PM」体制を日本に初めて導入したのも外資系製薬企業であり、1988年のことである。さて、「戦略マーケティング」とは、従来の「現状分析(現状把握型・改善型)アプローチ」から脱却して「理想構想(理想追求型・改革型)アプローチ」を進めるものである(図)。
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