実践! 医薬品開発のプロジェクトマネジメント【第2回】

2015/07/09 その他

 医薬品開発は、多くの場合、10年間と長期間で、2,000億円もの多額の費用が掛かるが、成功確率が3万分の1と極めて低い、などという特徴があることを前回述べた。今回は、時間及びカネを効率的に用い、成功確率を少しでも高めるイノベーション施策である「ライフサイクルマネジメント」について述べることにする。医薬品の「ライフサイクルマネジメント」は、候補品の探索段階からその役割を終えて販売中止に至るまでを「プロジェクトマネジメント(PM)」体制を確立して管理することである。このうち重要な要素である「戦略マーケティング」を取り上げ、「ステークホルダーとの連携」および「特許戦略」についても触れる。
 

● 戦略マーケティング
 医薬品開発において、製品価値最大化を図るためには、研究段階から販売中止に至るまでマーケティングの考え方を取り入れることが重要である。すなわち、早い時期からアカデミアや患者団体との接触や巻き込みを行い、さらには、通常はPhase II段階で起こるPOC(Proof of Concept)前後での視点の切り替えが重要である。すなわち、サイエンスおよびテクノロジーを駆使してスピードを最優先とする視点から、全面的な開発を目指すビジネスの視点へ切り替えるのである。これらによって、資源投資の効率化を図り、結果的には製品力を高め、製品寿命を延長することも可能となる。
 ところで、「マーケティング」と名付けられた部署は、1980年代まで、とくに内資系製薬企業には少なく、名称は問わずマーケティング機能を発揮している部署はほとんどなかった。ちなみに、「PM」体制を日本に初めて導入したのも外資系製薬企業であり、1988年のことである。さて、「戦略マーケティング」とは、従来の「現状分析(現状把握型・改善型)アプローチ」から脱却して「理想構想(理想追求型・改革型)アプローチ」を進めるものである(図)。


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執筆者について

熊谷 文男

経歴 筑波大学大学院客員教授、慶應義塾大学薬学部非常勤講師、東京薬科大学非常勤講師
1975年 中外製薬(株)入社。研究開発、プロジェクトマネジメント、人財育成などの業務を経験。米国駐在時には、国際開発も担当。国公私立大学、各種学会・セミナー、大手企業での講演や執筆は多数。現役水泳選手及びスキンダイビングインストラクター。製薬企業米国駐在員OB/OG会「アメリカファルマ会」会長、世界の難病の子供たちを救うNPO「荻田修平基金」 理事、就活支援組織「メディカルカレッジ」アドバイザリーボードメンバー、医薬品業界における「社会人基礎力研究会」アドバイザー、幼稚園理事長・園長、総合旅行業務取扱管理者、等。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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