医薬品開発における非臨床試験から一言【第11回】

2020/11/13 非臨床(GLP)

医薬品の開発は三極の規制当局と産業界代表の合計6団体が協力して、ICHの枠組みの中で共通の評価基盤を形成し、安全で有効な新薬がたゆまなく創り出されてきたことをこれまでに述べました。この共通の評価基盤としてICHガイドラインを取り決め運用しています。今回は、代謝物の曝露をキーワードにICH M3(R2)を取り上げて議論させていただきます。

ICHの規制側を支えていますPMDA(医薬品医療機器総合機構)のホームページを開けますと、ICHとは、International Council for Harmonisation of Technical Requirements for Pharmaceuticals for Human Use(医薬品規制調和国際会議)の略称と説明されています。そして、ICHは日本の場合、医薬品規制当局(厚生労働省、国立医薬品食品衛生研究所、PMDA等)と製薬業界(製薬協、東薬工、関薬協等)の代表者が協働して担当し、医薬品規制に関するガイドラインを科学的・技術的な観点から作成する国際会議と位置づけられています。

ICHのガイドラインは4つに分類され、Quality:品質、Safety:安全性(非臨床)、Efficacy:有効性(臨床)およびMultidisciplinary:複合領域(品質・安全性・有効性の複数領域)に分かれています。今回、取り上げますICH M3(臨床試験のための非臨床試験の実施時期について)は、1998年に成立し、2010年に2回目の改正が行われてICH M3(R2)として通知されました。

ICH M3(R2):「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」では、非臨床試験の実施時期が見直されました。動物実験の3R(使用動物数の削減/苦痛の軽減/代替法の利用)の原則に従って試験の見直しを行うとともに、新たに一般毒性試験のための高用量の選択、早期探索的臨床試験のための非臨床試験、免疫毒性、光安全性試験、薬物乱用に関する非臨床試験及び配合剤のための非臨床試験等の考え方についての指針が示されました。さらには、Q&Aが2012年に通知されました。

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執筆者について

内藤 真策

経歴

兵庫県出身。元(株)大塚製薬工場 研究開発部員。
医薬品開発における薬物動態からの安全性評価を専門とし、光学活性体の薬物動態、mRNA変動による肝臓の酵素誘導、薬物相互作用などの分野に注力してきた。京都大学で学位取得。現在は信頼性の基準について議論。
製薬協基礎研究部会では長年に渡り副部会長を務め、薬物動態分野のレギュラトリーサイエンスを牽引した。徳島大学客員教授、薬物動態談話会常任幹事、日本薬物動態学会および日本毒性学会の評議員を務めている。
論文は英文97報、総説3報を執筆し、共著では「ファーマコゲノミクスの進歩と創薬科学への応用」、「代謝物の安全性評価における投与量設定と投与経路選定」、「探索段階を含む非臨床と臨床段階での非GLP 試験の効率的実施事例」など10編を数える。薬剤師、趣味は写真撮影・ドライブ。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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