医薬品,医療機器滅菌の新しいトレンド“放射線滅菌”【第7回】

2016/01/27 製剤

山口 透

 滅菌の目的は、医薬品や医療機器などのバイオバーデンを死滅させ、患者等が感染等の不利益を被ることを防ぐことにあります。そのためには、バイオバーデンを理解し、安定した管理を行うことが必要です。それでは、バイオバーデンを安定化するためには何を行えばよいでしょうか。本稿ではバイオバーデンとは何なのか、また、正しく測定し、安定な管理をするにはどのようにすればよいのかを紹介します。

 滅菌の本質は、製品および包装材料に付着したバイオバーデンを殺滅することです。その点から考えると、バイオバーデンを測定しコントロール(管理)することは滅菌保証上重要になります。また、バイオバーデンだけではなく原材料、製造、作業者、環境、保管などの汚染状況を把握しコントロールする総合的微生物管理を行うことは、恒常的な滅菌保証につながり、また、滅菌により不活性化されないエンドトキシンの汚染防止にもなります。
 日本薬局方の参考情報「最終滅菌法及び滅菌指標体」1)には、「被滅菌物のバイオバーデンを定期的に測定し、把握しておかなければならない。」、また、測定法はISO11737-1を参照すると記述されています。平成25年、医療機器のバイオバーデン測定として、JIS T 11737-1(ISO 11737-1) 2)が制定され、製品上に付着したバイオバーデンをいかに回収し、培養、計数、同定するかについて詳細に記述されました。さらに、滅菌バリデーション基準によれば、定期的なバイオバーデン測定、また管理基準の設定が必要になっています。
 液状の医薬品などは水に溶解しやすいので微生物を回収しやすいのですが、医療機器は製品形状がさまざまで微生物の回収が困難な場合があります。そこで、付着している微生物を回収し、培養する最適な条件を設定するための試験方法バリデーションが必要になります。また、成分中または回収液中に微生物の発育を阻害する物質を含む場合は適切な不活性化が必要になります。

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執筆者について

山口 透

経歴 コンサルタント(滅菌、微生物管理、放射線改質)
元日本電子照射サービス(株) つくばセンター 技術担当部長
1955年生、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社にて医薬品、医療機器、医薬部外品、化粧品の開発(微生物関連、試験開発及びEOG滅菌バリデーション)、品質保証、薬事業務に従事し、2001年より日本電子照射サービス株式会社にて、電子線による改質、滅菌技術の研究開発、及び医薬品、医療機器等の電子線滅菌導入に係る滅菌条件設定、微生物、理化学受託試験を担当、2015年退職後、コンサルタント業(滅菌、微生物管理、放射線改質)開始、現在に至る。
元ISO TC198 WG8国内検討委員、 元ISO TC85 WG3 国内検討委員、元各JIS化検討委員、日本防菌防黴学会、高分子学会会員。
※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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