医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第8回】

2020/09/25 品質システム

佐野 旭

国内製薬企業の国際的な企業としての法律対応について

1、医薬品工場における現状
製薬会社のみならず日本国内企業の多くは国内法規制に何とか適合していれば、それ以上は考えないという傾向が多くの企業に見受けられます。例えば、製薬会社は薬事法に明記されていることさえ守っていれば心配無いと思い込んでいる人が少なくないようです。実務担当者でRegulatory Complianceでご苦労されている方々は熟知されていることなのですが、日本国の法律は政令、省令、条例など複雑で運用に完全を期すことが難しいと言われています。しかし、特定の法律のみ見ていては他の法律の趣旨に合わないこともあれば、その法律に対しては非合法ということが私たちの医薬品業界の現場業務には存在します。わかりやすい事例でで申し上げますと、皆さんだれでも知っている施錠について薬事法(主管厚労省)では毒薬は施錠、劇薬は施錠不要と明記されているようですが、「化学物質排出把握管理促進法」などでSDS(安全データーシート)の作成を義務付けている法律ではこのSDSに劇薬で施錠を要求している化学物質がたくさんあります。又は原薬保管に曝露リスクが大きく健康への影響が大きいなどの理由で施錠を求めています。つまり、薬事法では合法でも「化学物質排出把握管理促進法」では非合法となり、事件事故があった場合処罰されかねません。薬事法のみ見ていてはCompliance対応ができないということになります。同様に他の事例で軽視されがちな廃棄物管理ですが、医薬品廃棄物の取り扱いを担当部署が総務や物流他で管理が各部署任せで重要視されていないようです。更にひどいのは業務委託やアルバイト、パートさん任せになっている企業がある現状です。廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)は重要で複雑な法律の一つです。然しながら、この法律の第一条(目的)第三条(排出事業者責任)第14条(業許可)などの趣旨を熟知するため10年以上勉強されているご担当者は少ないのが現状です。そのような状況では困ることの一つをご紹介します。法律間の相反する事例ですが、廃掃法は責任の所在を排出事業者と明記してその責任範囲を大変広範囲に謳っています。この陳腐化した廃掃法が健在である所へその後改正暴対法(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律)が規制されてきたため、企業は両方の法律に適合すべく対応を迫られました。又、法律ごとに主管行政が異なるため陳腐化した廃掃法と改正暴対法が相反する事例を次のパラグラフでご紹介します。

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執筆者について

佐野 旭

経歴

外資系医薬品会社に入社後、建設プロジェクトや設備保全などを担当し、また関連会社においては、医薬品の検査・包装にも携わりました。その後は工場のHSE Managerとして工場長と共にHSE Global Standardの社内への浸透をさせるべく事業所内教育に力を注ぐ傍ら、たびたび海外の事業所へAuditに出かけてHSE Global Standardの重要性を身をもって学びました。
M&Aが始まり7回の会社統合を経験し、そのたびに工場閉鎖が発生し、その環境影響評価と土壌汚染対策を担当しました。
又、会社統合のたびにGlobal Standardが変わり、Global Standardの体質まで学ぶことになりました。
2006年に退職後、コンサルタント会社を設立し、今までの経験を生かしてHSEのアドバイザーとして、企業のHSE導入サポート、企業内教育、HSE Audit、社内教育、講演、講習会、建設プロジェクトサポートなどの仕事をさせて頂いて多くの企業様、学校、行政関係様にお世話になり、現在に至っております。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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