医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第4回】

2020/05/08 品質システム

佐野 旭

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
<お詫び>
前回コロナ感染者が出た工場の再生産開始条件の部分で書かせていただいた記事につきましては専門家としての意見であり、現時点では実験結果に基づいて基準として設定されたものではありませんので誤解のなきようお願い致します。前回記事にて記載済のことではありますが、混乱を招いたことを関係者の皆さんにお詫び申し上げます。医薬品工場は特に高活性工場では工場内の生産各室はクリーン廊下に対して陰圧に静圧をコントロールしているのが一般的です。
従ってコロナウイルスがクリーン廊下に持ち込まれると生産各室には簡単に持ち込まれるリスクがあることを踏まえて工場の入室管理を今まで以上に一人一人厳格に健康診査をして入室許可を出すよう管理されていると思います。
今回の意見は今までと同様では不十分と考えて管理条件を厳しくされている各社のご努力に対する励ましと考えていただきたいと思います。とはいえ関心を持って読んでいただいている読者の方が大勢いらっしゃることが解り、嬉しく思っております。引き続き、行政の方にも関心を持っていただけるような記事を書いてゆきたいと思っておりますので見守っていただければ幸いです。

佐野HSEコンサル株式会社 代表取締役 佐野 旭


医薬品会社の産業廃棄物取扱い確認事項について

1、医薬品工場における現状

日本の製薬会社は医薬品の高活性原料や製品、試薬、治験薬、言い方を変えればワクチン、抗生剤、毒薬、麻酔薬などを産業廃棄物として外注廃棄物処理会社に委託して廃棄処分しています。つまり、日本の法律である廃棄物の「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」で求められている要求事項をクリヤーしていればOKという理解で運用されています。このクリヤーが各企業の担当者の判断にゆだねていることが多いと聞いています。考えてみればグレーもあることは上級管理職者も知っていながら見過ごしているようです。何故なら、産業廃棄物を廃棄物処理会社に引き渡した後は廃棄物処理会社の責任で処理されていると誤解している人が意外と多い事に驚いています。工場長さんに至っては他人ごとのように考えていて法律上の排出事業者責任の解釈は担当者にお任せであり、言葉は悪いかもしれませんが、バレなければいいや、行政に話さなければ調べないし解らない、などなどと勝手な言い分でずるずる運用していることが気になっている人と気にもしていない人もおられるようです。
日本の法律は親告主義であることや廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律の略)では排出事業者責任で産業廃棄物業界が動いていることを工場長や上級管理者で知らないと答える人はいないと思います。しかし、昨今は社内告発や契約業者から行政へ流れることは当然のようにある時代です。黙っていればわからないのに新聞公表されたり、雑誌ですっぱ抜かれたりして社長や工場長及び担当者が記者会見をやむを得ずおこなった事例がたくさんあります。上層部は知らないことが多いのが現状です。「知らなかった」「部下が勝手にやっていた」では企業として一番恥ずかしい上層部の方々の記者会見での発言です。コロナウイルスと同様、明日は我が身です。全社を挙げてグレーの無い仕事をするよう改革を行いましょう。
 
排出事業者責任で実施する最終処分までの業務
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執筆者について

佐野 旭

経歴

外資系医薬品会社に入社後、建設プロジェクトや設備保全などを担当し、また関連会社においては、医薬品の検査・包装にも携わりました。その後は工場のHSE Managerとして工場長と共にHSE Global Standardの社内への浸透をさせるべく事業所内教育に力を注ぐ傍ら、たびたび海外の事業所へAuditに出かけてHSE Global Standardの重要性を身をもって学びました。
M&Aが始まり7回の会社統合を経験し、そのたびに工場閉鎖が発生し、その環境影響評価と土壌汚染対策を担当しました。
又、会社統合のたびにGlobal Standardが変わり、Global Standardの体質まで学ぶことになりました。
2006年に退職後、コンサルタント会社を設立し、今までの経験を生かしてHSEのアドバイザーとして、企業のHSE導入サポート、企業内教育、HSE Audit、社内教育、講演、講習会、建設プロジェクトサポートなどの仕事をさせて頂いて多くの企業様、学校、行政関係様にお世話になり、現在に至っております。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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