WFI製造プロせすへの思い【第21回】

 6つの製薬用水が薬局方に収載され限度値が定められています。WFIは、有機体炭素、導電率、エンドトキシンが、限度値として定められています。今回は限度値の守り方、効率化と安全性の話です。
 
1. 限度値への対応
 薬局方で定められる限度値への対応には、2つの取り組み方があります。1つ目は、いわば限度値を目一杯にクリアする方法です。2つ目は、できるだけ検出できる限界値に近い数値で管理しようとする方法です。
 この限度値は、注射剤製造所として許可要件の意味合いもありますから、数値をクリアすれば、「お咎めはない」という考えが前者、できるだけ限度値以下の数値を管理値とし、少しでも、この管理値から逸脱する気配をも見つけ、普段の状態へ戻そうと対応するのが後者です。
 筆者は、ことWFIに関しては、できるだけ後者、決められた限度値クリアのみを到達点にするのではなく、より厳しい自主的な管理を進めて欲しいと願っています。

 



2. 他分野での限度値は
 飲料水の分野で限度値設定は、一日に許容される最大量を想定し、成人に対して一日に許容できる量から定める方法があり、他分野ではこの決め方が一般的です。
 しかしながら、輸液など大容量注射剤は、体力の弱った患者へ注射されますから、健康な成人一日一人当たりに許容される値からの算定法は、WFIに関してはなじまないと考えます。体力が弱った患者にとって、WFIに残留できるEndotoxin値は、できるだけ低いに越したことはないからです。
 WFIは、生まれるしくみ、その過程を考え理解する姿勢、必ずどこかに存在する問題点を発見し進化させてゆこうという意欲を持ち続けて欲しいのです。
 最終的なWFI製造法を順守したとしても、供給水の水質や前処理装置の性能・運転管理は、現場状況により様々であり、WFI最終装置入口部で常に安定した水質を維持しているとは限らないのです。
 
3. 最終装置は弱点を知る
 蒸留法は、熱源を効率的に使うことを求めたことから構造が複雑になり、機種ごとでエンドトキシンを分離する能力が異なります。また、起動時停止時など運転状態が安定しないと分離性能がバラツキます。
 WFIは、ただ製造方法を順守しているからと言っても「これにて安心」に至らない要素を含んでいます。
 WFIを製造する最終装置に対しては、蒸留法であっても細やかな対応と言うか、装置の限界を知った上で、その弱点をカバーする対応が必要です。
 
4. 超純水は決められていない
 一方、電子産業で使う超純水は製造方法や水質基準が、公に定められている訳ではありません。業界団体で定めたロードマップに基づく水質基準のガイドラインは存在しますが、その都度、製造工程からの要求水質に応じた製造法が開発され、機器がシステムに加えられてきました。
 余りに多くの機器が加えられたことにより、逆に、機器そのものからの溶出低減や微粒子の発生防止が求められるようになったのです。
 究極的には、製品の性能向上や不良品の発生率低下を目的として、より高度な水質が求められ続けてきた経緯があります。
 
5. 効率化と安全性の選択なのか
 「効率化と安全性は一致しない」と言われてきました。超純水の利用は、半導体チップを洗浄する工程での効率化が目的であり、WFIの利用は、注射剤の安全性を確保する目的です。
 WFIは、人体に供給され安全第一ですが、超純水は、電子部品の歩留まり向上のための効率化第一です。
 ただ、いずれも水に含まれるあらゆる無機物・有機物を低減した水であることに変わりはありません。
 製薬用水の仕事を始めたとき、WFI製造の最終装置が蒸留器であり、超純水製造の最終装置がUFであることに、疑問を持ちました。この違いに対しては、安全性か効率化という二者択一から答えを出せない面が存在しています。

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