医薬品のモノづくりの歩み【第27回】

「モノづくりカルチャー」と生産性(7)

 前回に引き続き、工場における生産性向上の取り組みのステップ2の労働生産性についてお話しします。
労働生産性は、設備生産性と同様、一般的に労働時間や従業員数など人に関わる投入資源に対して、どの程度の出来高が生み出されたかで評価されます。工場の労働生産性評価では、労働者1人当たりの生産高または労働時間当たりの生産高で表されますが、近年は、より短い時間で効率的に仕事を行うことが重視されるため「1時間当たりの労働生産性」が指標として良く用いられます。
 国のGDP(国内総生産)を就業者数(または就業者数×終業時間)で割った労働生産性を国ごとに比較した結果、2022年では日本はOECD加盟国39ヶ国中27位に位置しており、米国の6割弱に留まっています。また、少子高齢化に伴う就業人口の減少に対する労働力不足が課題となっていることから、働き方改革に求められている、よりよい労働環境を創り上げて、労働生産性の向上や業務の効率化を進めることが求められています。※1)
 そのためには、一般的にIT技術を活用して、特に、データの集計や分析などの分野で業務効率化を図り、必要な人的資源を減らすことに取り組んだり、同じ業務量を短時間で行う、あるいは同じ時間で今まで以上の成果を出せるよう人材育成などに取り組みます。
 では、医薬品製造を担う工場では、労働生産性を上げるために、例えば、投入する労働資源に対して生産方式の変更や設備の自動化などにより労働時間当たりの生産高を高めることに取り組みます。
具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。

1)人手作業の機械化
 人による作業を可能な限り機械化することにより、作業者数の削減を図ります。特にマテリアルハンドリング、例えば、モノの搬送やパレットへの積み付けなどをロボット化することで付帯作業の効率化を図ります。また、医薬品製造では、予てから作業負担が大きい外観目視選別にカメラを使った自動選別機による機械化を進めてきており、最近はIT技術の進展により、高速で高精度の外観検査が可能になってきています。

2)作業時間の短縮
 決められた作業時間で所定量の製品を製造しますが、その作業時間を短縮することで労働生産性を高めます。
人と設備が連携して製造するラインでは、設備の生産能力を上げることにより、作業者の作業時間もそれに従って短くすることができます。また、ステップ1のロスの削減で触れたように、作業時間に占める設備稼働時間を長くするために、人による切替・調整作業、生産準備作業や終了作業など付帯作業時間を短くすることに取り組みます。例えば、保管している予備部品を使って次の切替準備をする外段取り化に取り組み、設備切替や型替え時間を短縮します。

3)就業形態の見直し
 1日の就業時間内に1ロット1単位の製造が終了しない場合、定時間就業であれば、日を跨いで生産を行う必要があります。そのため、製造が中断して、その都度、生産立上げと立下げ作業が発生します。そこで、作業者チームを2チーム編成して、2つの就業シフト体制を組んで生産時間を延長して同日内に1ロットの生産を終了させます。例えば、各チーム共に8時間の定時労働時間を前提に、1チームが朝7時から生産準備に着手して、午後3時頃まで生産を行い、別のチームが2時から1時間の重複する時間を持ったのち、生産を引き継ぎ22時までに生産を終了させます。
この2シフト体制による1日1ロット生産を行うことで、立上げ、立下げロスタイムの削減とその際発生する不良品の削減を図ります。

 



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