オーナーのプロジェクトマネジメント【第22回】

前回に引き続き検証ステージのプロジェクトマネジメントについて記載する。
 
参考 以前に記載した記事の目次
 1.  はじめに
 2.  プロジェクトステージの概要
 3.  何をマネジメントするか
 4.  プロジェクト計画に関連する主要な問題点
 5.  プロジェクトマネジャーの役割と責務
 6.  プロジェクトマネジャーの資質
 7.  プロジェクトで使用することば
 8.  外部への依頼範囲
  9-10. FS(Feasibility Study)ステージ
 11-13. 基本計画(概念設計)ステージ
 14-16. 基本設計ステージ
 17. 発注方式
 18-19. 詳細設計ステージ
 20-21. 製作・施工ステージ 
 22-25.
 検証ステージ【その1~4】

26. 検証ステージ【その5】
(1)テスト予算の決定
 プロジェクトの検証ステージの予算算出は、以前のステージでの予算算出の方法と同じである。積み上げ(bottom up)方式による予算算出の場合、以下の項目を考慮する必要がある。
・テスト実行計画と可能なスケジュールとの複雑性
・ テストのための契約方針(クライアントとサプライヤーの混合チーム)
・ テストのリスクアセスメントに関連したコンテンジェンシー費
  
 そして、テストの実施に関連するコストは一般的に以下のように分類できる。
・プロジェクト直接コスト(プロジェクト予算のもとで計上される)
・プロジェクト間接コスト(プロジェクト予算のもとで計上される)
・運転コスト(プロジェクト予算には計上されず、年間のプラント運転予算の
 もとで計上される)
 プロジェクトの直接/間接コストと運転コストとの区別については、プロジェクト予算の中で定義しておくこと。以下のものは、プロジェクトのWBSの中の個々の項目の実行にあたり、見積もられ、管理される一般的なプロジェクト直接コストである:
・各作業工数(時間)
- 各システムのテスト文書の作成
- 各システムのテスト文書の実行
- 各システムの仕様書の作成
- 各システムの手順書の作成
- 各システムの検査作業(人件費)
- 検証ステージのメンテナンス作業(人件費)
- 各システムの必要な打合せ
・原材料費
- 各システムの検証ステージの製造原料
- 各システムの検証ステージのスペアパーツ
- 各システムの検証ステージの消耗品
・その他のコスト:
- 検査や工場テストのための製作場所への旅費
- 品質保証のための試験要件検証(原材料費、計測器費用、試験費用)
- 仕様適合検証のためのテスト要件検証(原材料の検証、圧力試験、テストと
 調整、不動態化処理など)
- 検証ステージにおける安全面の確保に必要な機材
 
 以下の項目は、一般には、その項目に要する時間がプロジェクト全体に分散しているため、間接コストとして見積もられる。
・教育訓練のための時間(企業/現場固有、GxP、安全、業務など)
・プロジェクトマネジメントにかかる時間
・プロジェクト報告にかかる時間
・プロジェクト会議にかかる時間(一般)
・プロジェクトのチーム活動費用
・プロジェクト管理のためのインフラストラクチャ―費用
 
 既存の生産中の施設においては、プロジェクトのサポートは、フルタイムでもパートタイムでも、その施設の従業員により行われる場合が多い。また、殆どのプロジェクトではコンラクターやコンサルタントのサポートを必要とするため、プロジェクト予算のスコープはこれらの外部のコストに限定し、内部コストは通常の生産コストとして処理される場合がある。しかし、本来は、プロジェクトのコストと既設品の生産コストとは分離する必要があり、プロジェクトにかかるコストは内部コストであっても最終的にはプロジェクトの対象施設の固定資産として計上する必要がある。したがって、内部の従業員にかかるプロジェクトコストと既設生産にかかるコストを何らかの方法で分離することを当初より明確にしておく必要がある。

 上記の項目は、検証ステージだけに限ったことではなく、プロジェクト全体についていえる内容を含めている。また、すべてのプロジェクトタイプに適用できるわけではない。この検証ステージにおいて、重要な要員の交代やプロジェクト目標の変更が発生する場合があるので、要注意である。
 
 
(2)安全などに関する要件と目標の設定
 プロジェクトの検証ステージには、特有の安全リスクがある。テスト作業は、生産中の施設の周囲で実施される場合があり、正常運転範囲外の想定設定においてシステムをテストする場合も多い。テスト中のシステムの周囲で、施設が未だに施工中である場合もある。また、設計意図の検証中でもあり、システムの制御や安全設備が不安定な場合もある。また、チームメンバーが作業する環境は、プロジェクトの人間の相互関係による影響を受けやすい。このような状況において人命に関わるものも含め事故が発生しやすいことは明確である。そして、検証ステージにおける要員の安全は、品質よりも重要なプロジェクトマネジメントの課題である。

 さらに、検証の実行ステージにおける安全リスクの例には、以下のようなものもある。
・短期的テスト作業のための外部支援の利用によるリスク テスト作業のサプライヤー
 は、対象となる現場で作業したことがない場合があり、リスク軽減のためにはプロ
 ジェクトの安全面を徹底させる必要がある。このために、導入教育を実施し、現場
 での巡回指導を実施する必要がある。
・新規システムの教育訓練の一環として、オペレーターによるテスト実施によるリス
 クオペレーターは運転環境には慣れているが、施工中の環境においてテストを実施
 することには慣れていない。このリスクを軽減するために、オペレーターの立ち入
 り可能な区域を明確にする必要がある。
・検証ステージは非定常であり、未完成な施設による環境汚染のリスクテスト作業で
 発生する排水や排気などは、性状が不安定、不確実であるため、発生するであろう
 排水や排気の性状を事前に検討し、その処理を明確にしておく必要がある。
  
 プロジェクトマネジメントとしては、タスクの実行以上に、人の安全、防災、環境の保全といった面に配慮できるような、プロジェクトチームメンバーを構成する必要がある。

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