「造粒とは」【第1回】

はじめに
 医薬品の剤型として錠剤は、44.5%を占めている1)。錠剤は携帯性に優れ,容易に一定量の薬物を服用できることから有用な剤形である。錠剤の製造は、一般的に原料の粉砕、ふるい分け、混合、造粒、乾燥、整粒、滑沢剤混合、打錠およびコーティングの各工程からなる。錠剤の品質は製造工程でどのくらいの造粒度(造粒状態)の造粒物とするかである程度まで決まってしまう2)としている。そこで、本連載テーマのはじめに「造粒」について解説する。
 造粒の内容については、全4回の掲載を予定しており、【第1回】では、造粒の目的および各種造粒方法の概要と造粒方法の特徴について、【第2回】は、原薬物性の改質、原薬物性と造粒法、湿式造粒法における最適結合液量および打錠用造粒物の粒度について記述する。【第3回】では、各種造粒法と顆粒特性について、同一処方で異なる造粒法を用いることで、顆粒物性にどのような変化がみられるか、また、攪拌造粒と流動層造粒のトラブル対策に関して、そして【第4回】では、撹拌造粒と流動層造粒のスケールアップ方法、また、その問題点について解説する。
 
1.造粒とは
 造粒は、「粒状物」をつくることである。造粒には、粉体に結合液等を添加して、凝集させるサイズエンラージメント(粒径増大)と比較的大きな粒子を破砕して適切な粒状物とするサイズリダクション(粒径減少)に大別できる。造粒方法として、サイズエンラージメントによる湿式造粒法には、押し出し造粒、撹拌造粒、流動層造粒法などがある。一方、サイズリダクションには、スラグ造粒、乾式造粒法などがある。

2.造粒の目的3)、4)
 造粒の目的は、溶解性の向上、流動性の改善、飛散性の低減、偏析の防止による均一性の向上、打錠性の改善、粉体のハンドリング性の向上、保存性の向上・吸湿性の改善、商品付加価値の向上に加えて、服用性の向上等がある。

3.造粒方法
 造粒方法としては、押し出し造粒、撹拌造粒、流動層造粒法、そして、スラグ造粒、乾式造粒法などがある。主な造粒法を次の図15)で表した。

図1 代表的な造粒法
本図は、「<分野/材料別>造粒事例と頻出Q&A集」,西井和夫著、「第2章 各造粒法/
造粒機の原理と特徴・比較・選定・造粒条件・管理法等~収率UPに向けて~ 第1問 
造粒法の種類とは?」,17-18P, 情報機構(2009)の図1 代表的な造粒法(17P)を転載した。

押し出し造粒はExtruding、撹拌造粒がMixing、流動層造粒法はFluidizingで、乾式造粒法はPressingである。Tumblingは転動造粒法で、一般的には糖の結晶等を核として、ここに結合液を添加し、粉末を散布することにより、造粒する方法である。また、Spray dryingは結合剤を含む原薬の溶液または、分散液を噴霧し、チャンバー内で乾燥する噴霧乾燥造粒法である5)。   

3.1 湿式造粒法6)
 原料の混合末に、水などの液体や結合剤を溶解させた結合液を加えて、造粒する方法である。一般的に、湿式造粒法で製造された顆粒は、乾式造粒法に比べて、形状や粒子径が均一であり、微粉末の飛散も少ない。

3.1.1 攪拌造粒6)
 攪拌造粒は、原料の混合紛末を攪拌しながら、結合液を滴下、またはノズルから噴霧し、球状の粒子に成長させる方法である。この造粒法では、混合粉末と結合液との練合および造粒を同一の機械で短時間に行えるという特徴がある。攪拌羽根の回転により容器内に分散させた混合粉末に、ノズルから結合液を噴霧すると、粒子間に液体架橋が形成され、粉末間の付着・凝集が促進される。大きな凝集塊はチョッパーにより解砕されるので、全体として、顆粒の粒子径は一定に近づく。

3.1.2 流動層造粒6)
 流動層造粒は、容器内に送り込まれた空気中に粉体を浮遊させ、ノズルから結合液を噴霧することによって、粒子間に液体架橋を形成させながら、粉末同士を付着・凝集させ、球状の粒子に成長させる方法である。流動層造粒機の容器底部は胴径が細いため粉体は空気の流れと共に、容器上部へ上昇するが、上部の胴径は太く設計されているので、空気の流れが遅くなり、粉体の自重によって落下し、容器内に循環流が発生することにより、粉体は流動状態を保つ、この造粒法は、混合・造粒・乾燥までの操作を同一の機械で、密閉状態で行うことが出来るという特徴がある。多孔質で、かさ密度が小さく、溶解し易い顆粒が得られ、成形性が優れているので、打錠用顆粒として用いられている。

 

 

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