医薬品のモノづくりの歩み【第23回】

「モノづくりカルチャー」と生産性(3)

 生産性向上の取り組みと言えば、一般的に作業の効率化や原価低減活動を思い浮かべる方が多いと思います。
前回触れましたように、製造現場での生産性向上への取り組みは、製造で生じるロスやムダの発生を防ぐことから始まります。それは、日頃、医薬品を製造している時にロスやムダが発生して生産性を損なっていても気が付かないことが良くあるからなのです。
例えば、設備は止まることが当たり前と思っていませんか。あるいは、チョコ停が発生しても、その認識が弱かったり、設備トラブル発生時の対応が遅かったりすることはないですか。その他にも5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)の不備など、日頃気が付きにくい様々なロスやムダが潜んでいます。そのロスやムダの発生を顕在化させ、その発生原因を追究することが、生産性向上への糸口を見つけることになるからです。
では、どのようなことがムダやロスに繋がるのか、もう少し具体的に見てみましょう。
製造中の設備トラブルやチョコ停は、その対処に余計な作業の発生を招き、時間的なロスが生じるだけでなく、その間に不良品が発生して収量のロスも生じます。
又、製造中の作業ミスは、手直しに余計な時間が発生しますが、ミスによりその間製造した製品に品質上の保証が得られない場合、ロットアウトを招くこともあります。更に、5S特に職場の整理整頓と清潔清掃が疎かになると、職場が乱雑となり、作業の段取りや準備の遅れが生じることで作業時間のロスになるだけでなく、品質面でも、異種品や異物の混入を招く危険性があり、大きな品質問題に繋がることになります。
管理面でのロスやムダについて見てみますと、生産計画の計画ミスや、コミュニケーション不足は部署間の連携を損ない、安定供給上の問題を発生する恐れがあります。例えば、原料の発注忘れにより原材料の入荷待ちとなったり、作業指示の待ち時間を招いたりすることがあり、その結果、製造開始が遅れ、その間の時間ロスが生じることになります。
 このように日頃の生産活動の中で、様々なことが原因でロスやムダが発生します。この原因を取り除き発生頻度を抑えることが生産性向上への第一歩となるだけでなく、品質向上にも繋がっていきます。
では、このロスやムダの発生を抑えるために、どのようなことに取り組んでいけばよいか、更に話を進めていきます。

 図1では、ロスを発生区分ごとに分けて、生産性の指標の一つである製造原価の原材料費、労務費、間接費の基本3要素のどれに影響を与えるかを関連付けています。

図1 製造原価の3要素に関係するロス例

図1に示したように、原材料費に影響するロスには、不良ロス、収量ロス、原材料の受入れ原料ロスなどがあります。労務費に影響するロスでは、作業ロス、チョコ停ロス、作業能率ロスがあります。なお、作業能率ロスとは、作業に対する慣れや手順のミスによって生じるトラブルに対応するために発生した時間ロスのことです。そして、間接費に影響するロスでは、管理ロス、エネルギーロス、検査ロスなどが挙げられます。
 では、これらのロスについて一つひとつ発生原因と改善例を見ていきます。
まず、原材料費に影響を与えるロスの例から、不良ロス、収量ロスを取り上げて、話を進めます。

 

 

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