GMPヒューマンエラー防止のための文書管理【第69回】

2023/08/04 品質システム

供給者管理について。

供給者管理

1.監査
 GMP省令が改正され、原料等の供給者管理が求められた。原薬製造業者に対する調査は、GQP管理として、製造販売業者が行っている。その場合、原薬製造所としてGMP管理されていることを確認しなければならない。また、医薬品製造販売承認として定めている規格等に反していないかを定期的調査することになる。原薬製造所に対する供給者管理は、製造販売業者の取決めや定期的な調査に基づく情報を入手することで供給者管理を行うことになる。製材製品に不適合など逸脱が発赤しないよう原薬の受入時の品質に問題ないかを確認できるよう管理しなければならない。そのために必要な情報について、製造販売業者を通して入手する必要がある。

 原薬以外の添加物等の品目で、GMP管理を行わない製造所に対する監査を行う時、悩まれることが多いだろう。医薬品製造業に勤務している者が監査をする時は、GMP管理で学んだことが多く、GMP管理に関する要求をすることが多い。異物の混入を恐れて、いろいろと質問をしても製造所が秘密保持から公表しないことも多い。作業環境を考えて、異物混入するリスクがあるものは何か、取決めの段階で明確にしなければ、監査で発見することはできない。しかし、異物の可能性があるものの情報を原料製造業者は知らせることはしない。製品として影響する可能性がある異物とはどのようなものか、最終製剤製品を製造する製造所として、どのようなものが異物となると考えているかを原料、資材の製造所に知らせなければ、どのようなものが異物になるか理解できない。製剤製造所として、原薬資材製造所に、新規の段階で確認しなければ、原料、資材の異物混入する可能性があるものと判断できないことになる。異物の混入も製造所の環境を把握しなければ、必要な対策の確認ができないのである。

 監査を行う時、GMPとして、評価する方が多いのではなかろうか。取決めにおいてGMP管理として、省令等を遵守することを求める製造販売業者も多い。当局職員が適合性調査として製造所に査察する場合は、GMP省令等に違反することがないか、医薬品製造販売承認の規格に外れることがないかを確認しなければならない。民間の事業者が行う監査は、本来、取決め等の契約違反をしていないか、違反をする恐れがないかを確認することが本来の目的である。海外製造所の多くは、取決めや契約に反していないと主張することが多い。海外製造所から入荷した原薬品目が国内製材製品のGMP規格に反する結果を招いたことがあった。海外製造所に問い合わせた時、取決めや契約に記載されていないと主張された。日本のGMPに反すると伝えたが、取決めや契約で文書として求めていない部分を後から追及しても、海外製造所は承知しないのである。海外と日本の間で、すべてのGMP規則が同じわけでもない。日本から海外へ輸出する場合も、その国の規則に合致しなければならない。海外から原薬や医薬品を輸入するには、日本の海外製造業者認定を取得している製造所でなければならない。法改正がされて、必要になったが、このような制度もその国により異なる。海外製造所が日本へ輸出することを意識していなければ、日本向けに製造管理、品質管理を保持できない。GMPの対象でない原料、資材では、一層、日本の製造管理、品質管理として不足が生じる可能性がある。監査に立ち入る前に、事前に取決めや契約において、その品質として必要な管理を求めておかなければならない。

 

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執筆者について

中川原 愼也

経歴

GMPコンサルタント
1984年神奈川県庁に入庁。1997年国立公衆衛生院(現在の国立保健医療科学院の前身)でGMP研修を受講後、薬務課及び小田原保健所等で医薬品等の製造販売業、製造業の許認可、審査、指導を主にGMP・GQPリーダー査察官として16年にわたり活躍。その間、MRA(日・欧州共同体相互承認協定)締結の際のEU調査、2005年製造販売承認制度の施行に携わり、PIC/S加盟にあたり、厚生労働省の委員等委嘱を受け、次の活動に参加した。
 ・平成20、21年度 GMP/QMS調査・監視指導整合性検討会委員
 ・平成21、22年度 厚生労働科学研究~GMP査察手法の国際整合性確保に関する研究
2012年に神奈川県庁を退職後、医薬品原薬輸入商社、製薬企業、コンサルティング企業で品質保証やGxPコンサルタント業務に携わる。2025年6月よりGMPコンサルタントとして独立、現在に至る。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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