エッセイ:エイジング話【第53回】

試験室にあった蒸留器

 痛ましい事故が起こりました。京都府にある木津川(きづがわ)サイクリングロードで正面衝突が起こり、坂道の下手から来た60代のサイクリング者が亡くなりました。
 2023年4月1日から自転車へ装着が努力義務化された保護帽(ヘルメット)を、亡くなった人が装着していなかったことから、何度も全国版ニュースで取り上げられ知りました。
 木津川サイクリングロードは、有名な景勝地嵐山(あらしやま)が在る保津川(ほづがわ)と下流になる桂川(かつらがわ)を経由し、木津川へ繋がり走行したことがあります。木津川サイクリングロードへ遠征したのは10年前だったでしょうか、当時ヘルメットを被らずの走行であり、まさに他人事とは思えない自転車どうしの衝突事故でした。
・・・
 さて環境水の測定も、汚染物が一切含まれないブランク水が必要になるという話題を取り上げました。BOD測定用のブランク水としては、イオン交換水を使う習わしがありましたが、蒸留水も当時の試験室ではゼロ水として使っており、こちらは更に高純度が求められる用途でのブランク水でした。
 当時の一般認識は蒸留水最高純水だったのです。これは、後になって超純水(Ultra Pure Water)が登場するまで変わらぬ認識だったのです。製薬用水もイオン交換水から蒸留によってWFIを製造する流れはこの考え方の踏襲だったのです。薬局方の名称も当時は注射用蒸留水だったのです。


 もちろん、私が勤務した試験室でも蒸留水最高純水としましたが、習わしでは水道水を直に蒸留器へ給水しておりました。よって、水垢が缶体に少しずつ付着します。この水垢除去作業を稼働していない時間帯を見計らい蒸留器開缶を実施しました。
 ちなみに、この時に初めて蒸留器と接し手間がかかることを実体験しました。水垢除去に手間取る時は、予め待機させているガラス器具蒸留器により急場をしのぐこともありました。


 このガラス器具蒸留器からの蒸留水は他に用途がありました。微生物試験の際のシステムブランク確認に使いました。微生物試験の検体の1つに蒸留水を加えておき、ここから微生物が検出されないかを確認したのです。
 BOD試験イオン交換水を、微生物試験は蒸留水をゼロ水としました。ただ、蒸留水を封入した検体からも、偶には微生物が検出されることがあります。この一連の結果から見て微生物検査操作は、出来る限り人が検体や器具へ触れない手順へ向って改善することが精度の高い検査実施のポイントだったのです。
 

 

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