再生医療等製品の品質保証についての雑感【第48回】

第48回:バリデーション設計の考え方 (4) ~ 再生医療等製品のバリデーション設計を開始する


はじめに
 前回に引き続き、バリデーション設計について、雑感を述べさせていただきます。バリデーション設計とは、ユーザー要求仕様(URS)の作成が非常に大きな割合を占めると認識します。では、そのURSについて、予測的バリデーションを満たす記載を行えるようにするには何が必要と考えるべきでしょうか?

● バリデーションの要件
 医薬品等の製造における多くは、製品の全数について確認(品質試験)はできないので、必然的に最終製品からの抜取試験でしか保証はできません。そのためバリデーションでは、最終製品の品質に着目するのではなく、その製造工程に着目して、製造工程において目的とする品質が再現性良く恒常的に製造できることを確認する手法が必要となります。
 バリデーションの手法として必要なのは、下図に示すように、2段階の手順が必要と考えます。まず前段階(①)において、達成する品質(製品)が明確であること、および再現性のあるその製造手順を有することです。そもそも、URS作成の根拠は特定の製品製造の再現性を維持する環境(構造設備・運用)を構築することですので、製造する対象が存在しなければ品質実現はできません。アカデミアや受託業の細胞加工施設のURSにおいてまれにバリデーションの言葉が聞かれますが、この場合、対象の品質は無菌環境のみですので、ここで取り上げているバリデーションとは全く異なるものです。

図.  バリデーションの要件と手順の概要

 

 再現性のある製造手順(SOPsあるいはその原版)が準備されていることを前提に、バリデーションマスタープラン(VMP)の作成が開始されます。ここで初めてURSの作成に着手できます。細胞加工製品の製造では、医薬品製造のような共通の工程(例: CHO細胞の流加培養、打錠、充填、等)が少ないので、URSに対して予め準備ができる構造設備は非常に少ないです。そのため、上述した対象となる製品が限定されない構造設備設計のURSでは、理化学用の安全キャビネットや炭酸ガスインキュベータ、遠心分離器など、製品(細胞)の品質再現性が担保されない汎用設備のみが選択されてしまいます。あるいは、無菌環境品質達成に重きをおいた構造設備(アイソレータシステム等)を導入することにより、実施する細胞加工手順に支障をきたす、よりマイナスな事例も生じています。いまさらで釈迦に説法ではありますが、バリデーション設計では、製造工程の再現性(製造安定性)を確保し、その上で適切なURSを作成することで生産の安定化(工程安定性)が達成できます。これにより、品質の信頼性と実現性の両立を図ることができるのです。

 



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