医薬品工場に求められているHSE要件と事例【第37回】

国際化に対応する医薬品会社に必要なHSEとは?
「日本国内製薬企業の人的資本の国際化問題について」

1、  製薬企業のあるべき姿

製薬企業の国際化多様化が進む中、人的資本の国際化はすでに進んでいる。WBCで日本の栗山監督が日本語の話せないヌートバー選手を説得し、登用しました。筆者のみならず世界中の人々はこれで世界と戦えるチームとなったと少なからず感じ取った出来事ではなかったのでしょうか?話題が出たときはなぜアメリカ人の選手を日本のチームに参加させるのか?と一瞬、疑心暗鬼に思ったことでしょう。これは野球というスポーツの世界での出来事ですが、大切なのは栗山監督というTopが自ら国際化多様化に対応すべくチャレンジした結果です。同様の考え方が日本の製薬企業にも必要なのです。勇気と企業文化を変革せずには出来る事ではありません。すでに世界中に自社工場なり関連会社のサプライチェーン工場を持ち、ビジネスを展開している会社と国内にのみに活動拠点を置き諸外国企業とは、直接接触はせずにビジネスを進めている企業工場の違いが浮き彫りになってきました。 さて、国際化多様化を考えるとき、言われたことを淡々とこなしている社員の集団は非効率的な仕事をしていることに気がついていても嫌われる事を心配して意見を言わないことがあります。つまり、言わないことが会社にとって良い仕事をしていると理解していて、頑張っているから評価してくれる事を期待している場合もあります。これは会社の経営方針に問題があると考えねばなりません。戦後日本の多くの会社はこれで成果を上げてこれたからです。嫌われても自分の意見を言う社員で構成された会社でなければ効率的な仕事の出来る会社と言えないのです。国際化が進んで来たことで自分の意見を言うことが当たり前の文化で育ってきた外国人の社員が日本の製薬工場でも働く時代になりました。企業のTopやマネジメントは英語も国際化多様化も学ばねばこれからの企業として存続してゆくことが難しいではないでしょうか。なぜならTopが変革行動を起こさない限り、成り行きで国際化や多様化は対応出来ません。日本国内の企業もグローバルスタンダード(日本の法規制より少し厳しい法律で世界中で使用出来る)で運用する事がこれからのグローバル企業のあるべき姿なのです。 グローバルスタンダードを構築して国際化多様化に対応する世界基準で社員やサプライチェーン各社の従業員を健康被害や事故怪我から守り、更に環境配慮を行う事が求められています。 そんな日本の製薬工場や企業が世界中から尊敬され、信頼されるのです。GMPやHSEのグローバルスタンダードは国内法レベルではなく世界レベルの運用が行われている姿が求められています。

2,国内製薬企業の現状

しかし、現状の日本の製薬工場には「物を言う社員(自分の意見をはっきりと発言する社員)」の数がまだまだ少ないようです。これは日本の古い文化で上司から部下へTop Downで日常業務が進められることが是と考えられてきて約70年から80年が経過しています。にもかかわらず、少なからずこの古い文化を引きずってきている会社が多いのにびっくりします。以下にTop Downで失敗した事例を筆者の主観で列記しておきます。

1)ある温泉でのレジオネラ菌による健康被害の発生

物言う担当者を退職させて、社長が水質管理基準を守らずレジオネラ菌増殖による人的健康被害者を出した。社内からではなく被害者からの申し出により、法律違反が曝露した。筆者の憶測ですが、この会社の従業員の中には清掃頻度の問題や菌のサンプリング実施に関して法的問題点を知っている人がいたのではないか?と考えています。物言う従業員が社内で改善提案をしていれば大きな問題にならなかったのではないかと考えています。この事例は温泉宿の問題ですが大きな会社にも言えるようなTopの判断のみで水質管理を行ってきたため、違法行為が発覚しなければこのまま経営を続けているだろう事例です。さて、医薬品工場でこのレジオネラ菌を管理することの重要性が世界規模で問題になっており、グローバルスタンダード化されていることから、レジオネラ菌疾患につぃてご紹介しておきます。

「レジオネラ菌症」は「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」という所謂感染症法において四類感染症に分類されている疾患です。従って、直接国内規制も存在していますので国内でもRegulatory Complianceで管理が求められています。レジオネラ属菌は環境細菌であるため、土壌、河川、湖沼などに生息しており、人口の施設や設備の中で増殖すると、レジオネラ症を発症するリスクがある。日常の管理が求められていてリスクアセスメントをしてリスク低減対策を行わねばなりません。

さて、この事例から学ぶことは日本の法律は親告主義なので内部告発や被害者側から親告されなければ行政は対応しないのが原則です。しかし、行政が動く過程になってからは対象企業が業務を停止して厳しい罪状の調査を受けることになります。まずは殺人罪を想定して警察が調査を行いますので、Topは会社を守ることどころではなくなるのではないでしょうか。筆者の私見ですが、やはり日常より、Topや会社役員の方々は自分の意見を言う社員を育成するための教育や行動をとることが会社を救うために重要となります。合わせて、Regulatory Complianceで法律順守のための法改正等のGap Analysisをグローバルスタンダード化して日々運用してゆくことが重要課題です。これは簡単ではありませんので、専門アドバイザーなどと契約して運用方法を導入しなければなりません。Topや上級管理職者次第でいかようにでもなるのが、まだまだ日本の多くの企業の現状のようです。

グローバルスタンダード化し、ガイドラインに従い実践する事が求められます。

 

 

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