いまさら人には聞けない!微生物のお話【第34回】

2023/02/03 その他

微生物のみを扱うラボについて。

3. 微生物ラボの部屋割り

ここでは「重要な病原体を除くリスクレベル2以下の微生物のみを扱うラボ」という前提で話を進めます。

微生物ラボでの作業には、培地調製、無菌試験、一般微生物試験(菌数限度試験、生菌数測定、検鏡、特定菌試験など)、培養、廃棄処理、器具洗浄、事務作業などがあります。それに加え、器具類や培地などの保管スペースも必要です。場所と予算が許せば、それぞれ独立した部屋にするのがいいのですが、通常は様々な制約より、いくつかの役割を一つの部屋で共用するような運用になることが多いと思います。一般的な検討事項として、現実的に可能な範囲で以下のような設備を計画するのがいいでしょう。

①     微生物ラボは、既設の建屋内であっても、独立していることが望ましい。
②     微生物の外部への流出を防止するため、ラボは全体として陰圧で、それぞれの室間に適当な差圧があるように設計することが望ましい。
③     外部から最初に入る部屋は施錠できること。できればIDカードなどによる入退出管理を行うのが望ましい。そのため非常口や物品/廃棄物搬路を除き、出入り口は1か所にするとよい。
④     床や壁面は清掃や消毒がしやすい構造/材質であること。
⑤     電気、ガス、水道などのユーティリティが確保できること。機器によっては200Vの電源が必要な場合もあるので、その確保も検討すること。また実施する試験の内容によっては、圧縮空気やバキュームが必要な場合もある。
⑥     温水を備えた手洗い場や更衣室(場所)があることが望ましい。
⑦     オートクレーブを置く場所には局所排気装置があるとよい。
⑧     インキュベータ(特に冷却装置付き)はかなり発熱するため、部屋に専用の空調設備があることが望ましい。
 

それらを勘案して、表1に微生物ラボの使用目的、その特徴、望ましい設備をまとめました。

表1  微生物ラボでの試験と部屋に対する要求事項

微生物ラボを新設する際は、できればここに示したような4室+事務室があることが望ましく、またレイアウトにもよりますが、ラボへの入口部には更衣室、手洗い設備、非常用シャワー、洗眼器があることが望ましいでしょう。

なお医療機器の場合、無菌試験は、その製造管理においては多くの場合日常的には必要とはしません。そこで予算を削る必要がある場合は、あえてクリーンルームを設置しないという選択肢もあると思います。この場合、無菌試験は外部の試験機関に委託することになります。その分一般微生物試験エリアを広くとる方が、通常の使用には便利かもしれません。

 

 

 

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執筆者について

古谷 辰雄

経歴

株式会社シーエムプラス GMP Platform シニアコンサルタント
ジョンソン・エンド・ジョンソン、クリエートメディック、ボストン・サイエンティフックにて、滅菌管理、微生物管理、品質保証業務を経験した後、2013年に(株)シーエムプラス入社。
医療機器メーカー在籍当時、エチレンオキサイド滅菌のスペシャリストとして厚生科学研究班、各種滅菌関連委員会に参画。

※このプロフィールは掲載記事執筆時点での内容となります

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