【第4回】GCP-SOPライティング - GCPで必要なSOPと作成技法 -

 前回に引続きGCP省令第4条(業務手順書等)では、「実施医療機関及び治験責任医師の選定」に関する手順書の作成を治験依頼者に義務付けている。今回はこのSOPについて紹介しよう。

実施医療機関等
 GCP省令第6条の条文見出しは「実施医療機関等の選定」であり、治験依頼者に実施医療機関等の選定を「しなければならない」と義務付けている。実施医療機関等の「等」は実施医療機関と治験責任医師を意味しており、これらの選定にあたってはもちろんGCPで求められている要件を満たしていることを調査のうえで選定しなければならない。その手順をSOPで定めておく必要がある。
 実施医療機関を選定した後で、そこに所属する医師を治験責任医師として選定することもあるだろう。あるいは逆に、治験責任医師を選定した後で、その医師の所属する医療機関を実施医療機関として選定することもあるだろう。もちろん両者を同時に選定することもある。時には製造販売後の様々なマーケティング活動を考慮して、実施医療機関や治験責任医師を選定することも実態としてあるかもしれない。そのような場合は開発担当部門だけではなくマーケティング関連の部署との連携が必要になることもあるのだろう。
 実施医療機関(治験審査委員会を含む)と治験責任医師の選定に関してSOPに記載すべき手順を述べていくが、これらの項目はチェックリストとして様式を整え、このチェックリストを使用して選定することになる。

実施医療機関の要件
 GCP省令第35条(実施医療機関の要件)では「実施医療機関は、次に掲げる要件を満たしていなければならない」と記載し、治験を実施する医療機関の要件を定めている。一方、ICH-GCPではこのような要件を実施医療機関に求めてはいない。これは、日本では医薬品医療機器等法施行規則第40条(承認申請書に添付すべき資料等)において、承認申請資料を作成するために必要とされる試験データは、「試験成績の信頼性を確保するために必要な施設、機器、職員等を有し、かつ、適正に運営管理されていると認められる試験施設等において実施されなければならない」と定めているからである。
 このように同施行規則で規定している試験施設に関して、GCP省令第35条では「1)十分な臨床観察及び試験検査を行う設備及び人員を有していること。2)緊急時に被験者に対して必要な措置を講ずることができること。3)治験責任医師等、薬剤師、看護師その他治験を適正かつ円滑に行うために必要な職員が十分に確保されていること」と記載し、同条ガイダンスではさらに具体的な記載をしている。
 第35条で求めている設備及び人員並びに職員については、いわゆる大病院では問題となることは無いだろう。一方でクリニックの場合は1人の医師が実施医療機関の長と治験責任医師はもちろんのこと治験薬管理者や記録保存責任者など多くの役割を兼務していることが多いが、ほとんどの場合は SMO が支援しているので特に問題と捉えることもないだろう。さらにクリニック等の小規模医療機関の場合は、緊急時に必要な措置を行える医療機関との間で緊急搬送に関する契約や提携等を行っており、その旨が医療機関のSOP等に記載があることを確認しなければならない。

実施医療機関の長の責務
 第35条で記載されている要件を満たした実施医療機関を選定することとされているが、実施医療機関の長は治験業務の管理体制を整えることが責務であり、それが第35条以外の条文で書かれている。第36条(実施医療機関の長)では実施医療機関の長に治験に係る業務のSOP作成を求め、第38条(治験事務局)では治験事務局の設置を義務付けており、さらに第39条(治験使用薬の管理)では治験使用薬の管理や第41条(記録の保存)では記録の保存など、治験業務の管理体制に関する条文がいろんなところにあり、これらについて調査し選定しなければならない。
 どのタイミングで、誰が調査し、誰の判断で選定するかの手順を定める必要がある。実施医療機関の選定に関するSOPの作成に当たっては、第35条だけではなくGCP省令第四章第二節「実施医療機関」はもちろんのこと、PMDAの「新医薬品GCP実地調査チェックリスト(医療機関用)」が参考になる。
 

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